社説

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 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故の翌日、国は半径20キロ圏内に避難指示を出した。8万人が住む福島県の11市町村が含まれ、大熊町などは全町避難を強いられた。自治体は多数の被災者の移送対応に追われ、避難は混乱を極めた。

 それから10年たっても、原発事故の避難体制が十分でないと司法が指摘した。日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の運転を差し止めるよう住民が求めた訴訟で、避難計画に欠陥があるとして、水戸地裁が運転を認めない判決を出した。

 また、新潟県の東電柏崎刈羽原発では、昨年3月以降、テロ目的などの不正な侵入を検知できなかった可能性があると原子力規制委員会が発表した。侵入検知設備が故障し、代替措置も不十分だったという。

 規制委は、原子炉等規制法に違反するとして、事実上の運転禁止命令を出す方針を決めている。

 いずれも由々しき問題だ。原発は事故やテロへの対策が万全でなければならない。安全性への信頼を根底から揺さぶる指摘と言うしかない。

 東海第2原発から半径30キロ圏内には水戸市や日立市など14市町村があり、94万人が暮らす。避難計画は自治体が策定するが、定めたのは5市町のみだ。水戸地裁は「実現可能な避難計画が整えられているというにはほど遠い」と指弾した。住民の不安に理解を示した判断である。

 一方、判決は地震や津波の想定、耐震性には問題がないとした。福島第1原発の津波対策を先延ばしにした東電と異なり、原電は震災前に東海第2原発の防水壁建設工事をほぼ終え、重大事故を免れた。同原発は再稼働の前提となる規制委の審査にも合格している。

 それでもなお司法が運転を禁じたことは、原発稼働の条件として、安全に避難できる体制の整備が求められたと受け止めるべきだろう。

 制度上見過ごせない問題は、規制委の審査対象に避難計画が含まれていない点だ。国に対しても「自治体任せにしている」との批判がある。

 避難の課題は原発立地地域に共通する。再稼働した福井県の関西電力高浜原発と大飯原発の30キロ圏内には18万9千人が居住し、その避難先に兵庫県の市町も想定される。また兵庫県の一部は50キロ圏内に入る。

 昨年には、コロナ禍中に両原発が事故を起こす想定の避難訓練が行われた。だが実際の事故で、被ばくを恐れて自主避難する人が多くなれば計画通りに進むとは限らない。

 住民にとってテロ防止を含む原発自体の安全対策に加え、避難計画は不可欠だ。政府と規制委には、実現可能な計画が作れるまでは原発を動かさないという姿勢を求めたい。

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