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 菅義偉首相がバイデン米大統領とホワイトハウスで初めて会談した。

 国内で新型コロナウイルス感染症が爆発的に拡大する中、訪米に踏み切ったのは、「強固な日米関係」を印象付けて政権の浮揚につなげる狙いがあったのだろう。

 他の先進国に先駆けて対面会談の一番乗りを果たした背景には、日本側の熱心な働き掛けがあったとされる。一方、米国側も日本重視の姿勢を示してこれに応えた。

 政権発足間もない両国の首脳同士が連携強化を確認し合ったのは一定の成果とみていい。

 ただ、安全保障や人権問題などで中国と対立するバイデン政権との共同歩調を明確にした日本は、重い宿題を背負ったとも言える。東アジアの危機を回避する取り組みが、これまで以上に問われることになる。

 今回、両首脳は中国が軍事的圧力を高める台湾海峡を巡り、「平和と安定の重要性を強調し、平和的解決を促す」と共同声明に明記した。

 日米首脳の共同文書で台湾に言及するのは、冷戦期の1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談以来52年ぶりである。72年の日中国交正常化以降では初めてだ。

 3月に開催された日米外務・防衛担当閣僚による協議の共同文書にも同様の表現が見られる。両国トップによる共同声明は、さらに習近平指導部を刺激するだろう。

 中国は台湾を不可分の領土と主張しており、「必要な措置を取る」と日米を事前にけん制していた。今後、沖縄県・尖閣諸島周辺への公船侵入などで日本への示威的な行動を強める恐れがある。

 台湾付近でも中国の動きは活発化している。軍事演習を重ね、空母建設やミサイル開発を進めており、米軍幹部は「6年以内」の中国侵攻の可能性を口にする。偶発的な衝突も否定できない状況だ。

 その場合、米国が日本に負担を求める可能性がある。米軍への武力攻撃が日本の「存立危機事態」と認定されれば集団的自衛権行使の議論に移るが、それを定めた安全保障関連法自体を違憲とする専門家は多く、国内の混乱を招きかねない。

 そもそも、軍事力に抑止効果はあるとしても、根本的な問題解決にはならない。菅首相が言うように平和裏の解決を「最優先」とするなら、中国を対話の場に引き込む戦略に知恵を絞る努力がより重要だ。

 日米両国は香港や新疆ウイグル自治区の人権抑圧に「深刻な懸念」を表明した。日本は欧米諸国以上に、ミャンマーも含めたアジア諸国と官民のパイプを地道に築いてきた。協調と共存を目指す「平和国家」の外交力を、今こそ追求したい。

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