社説

  • 印刷

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の核物質防護不備を巡り、原子力規制委員会は東電に対し、事実上の運転禁止命令を出した。核燃料の移動を禁じる是正措置命令である。保管された燃料を原子炉に装填(そうてん)できず、追加検査にも1年以上かかるため、再稼働は見通せなくなった。

 商業炉に対する措置命令は初めてだ。東電の小早川智明社長は「私が先頭に立ち事業を立て直したい」と語った。東電はこの命令を重く受け止め、原発を運転する資格があるのか、経営陣の責任を含めて厳しく問い直すことが求められる。

 同原発では昨年3月以降、計15カ所でテロ目的などの侵入を検知する設備が故障し、代替措置も不十分だった。同僚のIDカードを使った中央制御室への不正侵入も発覚した。

 東電は10年前に福島第1原発事故を起こしたにもかかわらず、ずさんな核物質防護を続けていた。重大事故への反省と責任感の欠如には、驚くしかない。規制委は防護不備の安全重要度を最悪レベルの「赤」と評価した。当然の判断だろう。

 命令の決定を受け、新潟県の花角英世知事は、東電に原子炉の運転を行う能力があるかどうかの再評価を規制委に求めた。規制委は厳格な検査を行い、事態の改善が望めない場合、原子炉設置許可自体の取り消しもちゅうちょすべきではない。

 政府は、菅義偉首相が打ち出した温室効果ガス実質ゼロに向け、エネルギー政策見直しの議論を本格化させている。火力発電よりも温室効果ガスの排出が少ないとして、原発を重要な電源と位置付けるが、安全確保や信頼性に疑問符が付いたままでは無責任と言わざるを得ない。

 福島の事故後、国内で再稼働ができたのは5原発9基にすぎない。規制委の審査に通っても再稼働が進まないのが現状だ。

 日本原子力発電の東海第2原発を巡っては、避難計画に欠陥があるとして、運転を認めない判決が今年3月、水戸地裁で出た。国が進めてきた核燃料サイクル政策は事実上破綻し、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も決まっていない。

 原発依存を続ける社会的なリスクは、稼働による利益を超えると考えるのが妥当ではないか。

 今回の命令により、柏崎刈羽原発の再稼働に不可欠な地元同意も遠のいた。東電の経営再建計画の前提が崩れることになり、福島の廃炉や被災者への賠償に影響が出る恐れも否定できない。

 東電は核物質防護の改善を進めるとともに、「再稼働ありき」の再建計画を見直し、新たな経営の在り方を早急に探らねばならない。

社説の最新
もっと見る

天気(6月17日)

  • 28℃
  • 22℃
  • 20%

  • 28℃
  • 19℃
  • 30%

  • 29℃
  • 21℃
  • 20%

  • 29℃
  • 20℃
  • 20%

お知らせ