社説

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 大人に代わって家族の介護や世話に追われる18歳未満の子どもたちの困難な状況が明らかになった。

 ケアを担う若者という意味の「ヤングケアラー」と呼ばれる。高齢化や貧困問題を背景にその支援策が各国で課題となる中、日本で初めての全国調査の結果がまとまった。厚生労働省と文部科学省が実施した。

 「世話をする家族がいる」と答えたのは、中学生の約17人に1人、高校生の約24人に1人に上った。クラスに1~2人いる計算になる。決して少ない数字ではない。

 幼いきょうだいを世話するケースが最も多く、身体障害のある父母や認知症の祖父母を介護する姿も浮き彫りになった。半数弱がほぼ毎日世話をし、費やす時間は1日平均約4時間に及ぶ。7時間以上という生徒も1割を占めた。

 もはや「手伝い」の範囲を超えている。これ以上は見過ごせない。

 実際、回答者から「宿題や勉強する時間がない」「睡眠時間が十分取れない」といった切実な声が寄せられている。高校生の約6%は「進路の変更を考えざるを得ない、もしくは変更した」と答えた。

 子どもたちの将来の可能性を守るためにも、過度の負担や悩みに周囲の大人がいち早く気づき、福祉サービスや学習支援につなげる仕組みづくりが急務である。

 調査では6割が誰にも相談していなかった。自分自身がヤングケアラーだと認識している子どもは極めて少なく、自覚のないまま孤立している現状がうかがえる。

 学校は、遅刻や欠席、学習の遅れの背景に家族のケアの問題がある可能性を認識してほしい。早期発見には家庭環境の把握が欠かせない。教育委員会と福祉担当部署が連携し、学校任せにしないことが重要だ。

 国は5月に支援策をまとめるというが、18歳以上のヤングケアラーにも目を向ける必要がある。

 神戸市では2019年、当時21歳の元幼稚園教諭が90歳の祖母を殺害する事件があった。認知症の祖母と2人で暮らし、介護をほぼ1人で担っていた。事件前夜には自殺未遂を図るまで追い詰められていた。

 事件を受け神戸市は福祉局に「こども・若者ケアラー支援担当」を置いた。10~20代の相談に乗るほか、関係機関に個別対応を指示したり、教員への研修を行ったりする。実効ある取り組みを期待したい。

 英国は1980年代からヤングケアラーの研究や支援に取り組んできた。しかし日本は介護を家庭の責任ととらえる風潮が強く、問題が十分に認識されてこなかった。「自助」ではなく「公助」の観点で次世代を支えねばならない。

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