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 米映画界最大の祭典、第93回アカデミー賞で、中国出身のクロエ・ジャオ監督の「ノマドランド」が作品賞と監督賞、主演女優賞の3冠に輝いた。白人以外で女性監督が受賞するのは史上初めてである。成し遂げた偉業に賛辞を贈りたい。

 ノマドランドは米西部で遊牧民(ノマド)のように暮らす60代女性の物語だ。ジャオ監督は「より多くの人が夢を追い掛ける後押しになるのであれば、ありがたい」と喜びを語った。

 助演女優賞は、韓国から米国に移住した一家を描く「ミナリ」のユン・ヨジョンさんに贈られた。韓国人俳優のアカデミー賞受賞は男女通じて初となる。白人色の強い米映画界で、アジア人が躍進した意義は大きい。

 ハリウッドは「オスカー真っ白」と言われるほどの白人社会だった。しかし、2016年の演技部門候補が前年に続き全員白人となったことから批判が高まり、授賞式をボイコットする人も現れた。そこで、映画芸術科学アカデミーは賞の投票権を持つ会員を多様化し、女性やマイノリティー(人種的少数派)を倍増する改革に乗りだした。昨夏までに女性は2倍強、少数派も3倍以上になった。

 改革はまだ途上との声もあるが、アジア、アフリカ系を含め受賞結果で人種の多様化、若年化が進んだことは評価できる。

 足元の米国社会も分断や差別に苦しむ。新型コロナウイルスの影響でアジア系市民への暴力や嫌がらせが増えた。カリフォルニア州立大サンバーナディーノ校によると、主要16都市で昨年起きたアジア系への憎悪犯罪(ヘイトクライム)は前年比2・5倍の122件。米非営利団体には昨年3月からの1年で、暴力や嫌がらせの報告が約3800件寄せられた。

 3月にアトランタと近郊で起きた連続銃撃事件では、アジア系女性6人が亡くなった。人種による憎悪犯罪が疑われており、断じて許すことはできない。

 アカデミー賞の投票には、そんな社会的課題への警告も込められていたのではないか。憎悪の背景には、トランプ前大統領が新型コロナを「中国ウイルス」と呼び、偏見をあおったこともある。バイデン政権は差別根絶へ対応を急がねばならない。

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