社説

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 運転開始40年を超えた関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)、高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に、同県の杉本達治知事が同意した。東京電力福島第1原発の事故を受け、原発の運転期間は「原則40年、最長で延長20年」と定められた。以後初めて「老朽原発」の延長運転が行われる。

 老朽原発については、放射線の影響で原子炉の圧力容器などが劣化している恐れを専門家が指摘する。設計の古さや、長期間停止後の運転再開を不安視する意見もある。

 その運転延長は「例外」とされてきた。事故の反省を踏まえて定めた歯止めの形骸化が懸念される。

 再稼働には美浜、高浜両町も既に同意している。しかし地元住民には反対の声が根強い。隣接する滋賀県の三日月大造知事も「再稼働を容認できる環境にない」と述べている。関電は住民の不安が解消されていないことを忘れてはならない。

 この3基は、福島の事故後に義務付けられたテロ対策施設が完成していない。再稼働しても、年内には施設の設置期限を迎えて停止することになる。対策の不備が残る中での福井県の判断は理解に苦しむ。

 40年超原発では日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)も原子力規制委員会の審査に通った。だが地元同意は進まず、今年3月の水戸地裁判決は「避難計画に欠陥がある」として運転を認めなかった。

 美浜、高浜原発の避難計画も万全とは言い難い。高浜原発の50キロ圏内には兵庫県も含まれる。県内市町は広域避難先に想定されているが、福井からの受け入れと兵庫からの自主避難が重なる混乱もありうる。

 さらに、福井県が関電に求めてきた使用済み核燃料の県外搬出は見通しが立たないままだ。杉本知事は、関電が2023年末までに搬出先の候補地を確定させると述べたことに理解を示した。だが、これまで同様の約束は何度も破られてきた。

 関電は青森県むつ市の施設を選択肢の一つとして挙げたものの、同市は拒否の姿勢だ。難題を先延ばししたにすぎないのではないか。

 40年超原発1カ所に、国は最大25億円の交付金を支払う。地域振興と再稼働を引き換えにするような旧来の手法であり、疑問が残る。東海村の村上達也前村長も「目先の利益を優先し、危険な再稼働を認めた責任は重い」と今回の同意を批判する。

 国は温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」を目指す。これを名目に、例外であるはずの運転延長を、なし崩し的に認めることは許されない。懸念を押し切って再稼働させる前に、安全を巡る諸課題の解決方法を明確にするべきだ。

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