社説

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 日本学術会議は、菅義偉首相が拒否した会員候補6人の即時任命を求める声明を総会でまとめた。

 6人はいずれも人文・社会科学分野の候補で、安倍前政権が成立させた安全保障関連法などを批判していた。だが、任命拒否が発覚した昨年10月以来、首相も政府もその理由を十分に説明していない。これでは時の政権に異を唱える研究者の排除を狙った、恣意(しい)的な人事と疑われても仕方がない。

 6人は内閣府への自己情報開示請求で、拒否理由を明らかにするよう求めている。理にかなう説明ができないなら、首相は拒否を撤回し、速やかに6人を任命するべきだ。

 日本を代表する学術団体である同会議は、国の「特別の機関」として「独立して職務を行う」と日本学術会議法で定めている。科学者が国家に追従し、戦禍に国民を巻き込んだ過去への深い反省からである。

 分野を超えた多くの学会が首相に任命拒否の撤回を求めている。元会員で97歳になる気象学者が募った撤回を求めるネット署名には6万1千人が名を連ねた。人事への政治介入を許せば、「学問の自由」が侵されるとの危機感の表れだろう。

 これに対し、任命拒否の法的根拠は乏しい。同会議法は会員定員を210人とし「会議の推薦に基づき首相が任命する」と定める。歴代政権は、首相の任命は形式にすぎない、とする国会答弁を踏襲してきた。

 ところが菅政権は「推薦通りに任命する義務はない」と法解釈を曲げ、拒否を押し通した。その結果生じた欠員を半年も放置するのは無責任というほかない。自ら招いた「違法状態」を解消するには、首相が法に従い、学術会議の推薦候補を任命するしかないのは明らかだ。

 一方、学術会議は政府が求めた組織改革の検討に応じた。公的地位、国からの独立、財政基盤などの要件を踏まえ、今の組織形態が役割を果たすのにふさわしいと結論づけた。

 政府機関からの「切り離し」を求める自民党は反発し、政府は新たに有識者会議を設置して学術会議の在り方を議論する方針を決めた。

 だが、内閣府の有識者会議は6年前に「現在の形態が望ましい」との報告書をまとめており、短期間での再検討には首をかしげざるを得ない。任命拒否の違法性を曖昧にし、混乱を長期化させるだけではないか。

 コロナ禍で先が見通せない中、科学に裏付けられた政策は重要性を増す。政権が仕掛けた組織改革論に時間を割かれ、本来の活動に支障が出ているとすれば見過ごせない。

 学術会議の機能を今こそ発揮してもらわねばならない。政治にはそれが可能な環境を整える責任がある。

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