社説

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 憲法改正の手続きを定める国民投票法の改正案が衆院を通過した。2018年の提出から約3年を経て今国会で成立する見通しとなった。

 駅や商業施設で投票できる「共通投票所」の導入や期日前投票の弾力化など7項目にわたり、公選法と同様の投票環境を整える内容だ。有権者の利便性を向上させる法改正に、反対する理由は見当たらない。

 ただ、国民投票制度には重大な課題が残されている。放置すれば投票結果の正当性が疑われかねない。

 国家の基本である憲法の改正は、国民が納得できる公正、公平な手続きが保障されていることが前提だ。国会には、一つ一つの課題に結論を出す議論を引き続き求めたい。

 その一つが、テレビCMやインターネット広告の規制である。現行法は国民の活発な議論を促す趣旨で、投票前14日間を除き原則として自由な運動を認めている。

 一方、資金力が豊富な政党や団体が大量にCMを流すなどすれば、投票行動を左右する恐れがあると07年の法制定時から指摘されていた。

 当時は想定していなかったインターネットの進化で、真偽不明の情報やフェイクニュースの拡散による世論の誘導といった問題も浮上した。表現の自由とのバランスを考慮した丁寧な検討が欠かせない。

 CM制限などを求めてきた立憲民主党は今回、「3年をめどに法制上の措置、その他の措置を講じる」と付則に盛り込む法案修正を自民党が全面的に受け入れたとして、一転賛成に回った。だが「措置」の具体的内容には触れておらず、課題の先送りと受け取られても仕方がない。

 今国会で改正案が成立しなければ衆院解散で廃案となる公算が大きい。与野党それぞれが都合よく解釈できる玉虫色の付則で、決着を急いだ印象は否めない。

 さらに、国民投票が成立する条件となる「最低投票率」の規定がない点も懸案のままだ。法制定時の付帯決議で導入の是非を検討するとしたが放置されてきた。

 国会は、国民の総意を反映する国民投票制度のあるべき姿を追求する、真摯(しんし)な議論を怠ってはならない。

 ところが自民党内には、今回の合意を糸口に憲法改正項目の議論を進めようとする動きが見え隠れする。下村博文政調会長は改憲派の集会で「コロナのピンチをチャンスに変えるべきだ」と述べ、緊急事態条項の新設をアピールした。

 後手に回る政府のコロナ対応を棚に上げ、危機に乗じて改憲ムードをあおるような発言は許されない。憲法が保障する国民の自由と権利を守るため、コロナ禍の収束に全力を挙げるのが政権の最優先課題である。

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