社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が延長され、東京五輪・パラリンピックへの逆風は強まるばかりだ。今月予定されていた国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の来日が見送られた。兵庫県でも23、24日に県内14市を巡るはずだった聖火リレーが、公道での実施を取りやめた。

 開催に対する世論も厳しさを増している。

 本紙が先月末、会員制交流サイト(SNS)で実施した調査では、77%の回答者が大会を「中止」「延期すべき」と答えた。何らかのかたちでの開催を望む21%を大きく上回った。五輪よりもコロナ対策を求める県民が多いことが分かった。

 特に気がかりなのが逼迫(ひっぱく)する医療への影響だ。国内では病床不足で十分な治療を受けられず亡くなる人が相次ぐ。大会には計数千人の医療スタッフが必要で、感染した選手らに対応する大会指定病院も30カ所を想定する。コロナ禍で疲弊した医療にしわ寄せがいくのは避けられない。

 大会の開催によってウイルスが海外から流入し、それを世界に拡散する可能性があると専門家が指摘している点も懸念材料だ。新たな変異株を生む恐れさえある。

 五輪の参加選手は約1万1千人、パラリンピックは約4400人を見込み、関係者を含めれば10万人程度となる。短期間に各国からこれだけの人が集結する大会を安全に実施するのは至難の業である。

 選手は出国前に2回のウイルス検査を受け、入国後も原則毎日検査を受ける。行動は制限され、国民との接触も防ぐとされる。しかし通常2週間の待機は必要なく、入国初日から練習ができる。検査や行動管理は本当に可能なのか疑問だ。

 こうした対応が国民に不安を抱かせているにもかかわらず、菅義偉首相は「安心、安全な大会の実現に全力を尽くす」と繰り返すばかりだ。私たちが今知りたいのは、実現できるという根拠と具体策である。

 首相は選手団へのワクチン無償提供が安心につながると述べるが、国民へのワクチン接種が遅れる中、選手優遇とも取れる発言には否定的な声もある。人々の融和を目指すべき五輪が逆に亀裂を生むようでは開催趣旨にもとる。

 大会組織委員会などは観客数の上限を6月に判断するという。緊急事態宣言の解除も見通せない以上、無観客は避けられないのではないか。

 残された時間は少ない。首相は開催の可否についての判断基準も明確に示すべきだ。「開催ありき」でなく、中止を含めた議論もちゅうちょしてはならない。

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