社説

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 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫や肺がんなどの病気になった元労働者と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁が国の賠償責任を認める判決を言い渡した。メーカーの責任も一部を認定した。

 兵庫県内の原告を含む全国の計約1200人が起こした「建設アスベスト訴訟」で初めての統一判断である。最高裁が「石綿の危険性やマスク着用の必要性について、表示などをするよう指導監督すべきだった」として、国の違法性を真正面から認めたことは画期的と言える。

 対策を怠った結果、健康被害を拡大させた責任を国は重く受け止めなければならない。

 石綿は安価で断熱性などに優れ、戦後に建材として広く使われたが、身体に深刻な影響があると分かって規制が進んだ。2005年、尼崎市のクボタ旧神崎工場内外での被害が判明し、大きな問題となった。

 最高裁判決は、国が1975年には石綿粉じんの危険性を理解していたと指摘し、政令で石綿の輸入がゼロになる04年までの対応が違法だったと述べた。「一人親方」と呼ばれる個人事業主らも保護対象とした。危険にさらされるのは労働者と同じとの判断は当然とはいえ、救済範囲を広げたことは評価できる。

 判決を受け、菅義偉首相は原告らに「真摯(しんし)に反省する」と謝罪した。与党は1人当たり550万~1300万円の和解金を支払う和解案をまとめ、国と原告団は和解に向けた基本合意書に調印した。提訴していない被害者にも同額の給付金を支給する制度をつくるという。スムーズに受け取れる仕組みを求めたい。

 一方で課題として残るのは、メーカーによる賠償問題だ。最高裁はメーカーが連帯して責任を負う場合もあると判じたものの、企業側に救済への動きはなく、和解の枠組みにも加わっていない。原告側は、国と企業が拠出するかたちの被害者補償基金創設を求めている。メーカーは速やかに和解の協議に着くべきだ。

 石綿関連の労災認定は昨年3月末までに1万7千件を超え、そのうち建設業が5~6割を占める。石綿の被害は吸ってから数十年後に現れるなど潜伏期間が長く、建設関連では今後も毎年500~600人の被害者が出ると予測されている。原告の多くは既に亡くなっており、救済には一刻の猶予も許されない。

 判決で、建物解体に携わった元労働者への賠償も認められる方向になった。阪神・淡路大震災の被災地では、当時の解体現場で出た石綿による健康被害も心配されている。和解案の具体化とともに、被害の掘り起こしにも力を入れる必要がある。

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