社説

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 妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」の在り方について、厚生労働省の専門委員会が報告書をまとめた。従来の方針を大きく転換する内容だ。

 国は今後、厚労省も参画する検査施設の認証制度を創設する。国が関与することで信頼性を高め、妊婦が正確な情報にアクセスできる態勢を整える狙いがある。学会の自主規制に任せるだけでは限界があり、見直しは一定評価したい。

 新出生前診断は、日本では8年前に導入された。妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを分析し、ダウン症など3種類の染色体異常の有無を推定する検査だ。ただ、これだけでは正確な判定はできず、確定診断には羊水検査が必要となる。関連学会が策定した指針に基づき、原則35歳以上を対象にカウンセリング体制の整った施設に限り認められてきた。

 一方で、無認定の民間クリニックの参入が増えている。出産の高齢化で関心が高まり、医療技術の進歩により手軽に検査を受けられるようになった環境の変化がある。しかし、これらの医療機関では検査情報が十分提供されなかったり、妊婦への結果説明が不十分だったりして混乱を招くケースもあるという。

 検査を受けるかどうかや、胎児に異常が見つかった場合の対応に苦悩する妊婦や家族は少なくない。大切なのは、彼らが直面する状況に寄り添い、当事者の意思決定を支える環境を整えることである。

 そこで、「医師が妊婦に検査の情報を積極的に知らせる必要はない」とした旧厚生省専門委の見解を約20年ぶりに改め、国や自治体が検査に関する情報を妊婦に提供することを容認する。インターネット上には出生前診断に関するさまざまな情報が飛び交う時代だ。正確な情報提供を検査の適切な利用につなげたい。

 胎児の異常を調べるということは「命の選別」につながりかねない。検査を受けない権利もある。国が検査を勧めていると受け止められないよう、慎重な配慮が必要である。

 日本ダウン症協会も懸念を深めている。情報提供の内容によっては「ダウン症が出産するか否かの選択を要する障害だとの誤った理解を広めかねない」として、丁寧な対応を求める。国はこれらの声を重く受け止め、正しい情報の発信に努めるべきだ。障害がある子どもとの暮らしについて学べる工夫や、医療や福祉など支援体制の周知も欠かせない。

 日進月歩の検査技術がもたらす現実とどう向き合っていくのか。当事者を支える体制づくりとともに、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して産み育てることができる社会の在り方が改めて問われている。

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