社説

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 女子テニスの大坂なおみ選手が、四大大会の一つである全仏オープンのシングルス2回戦の棄権を表明した。1回戦後の記者会見を拒否して主催者側と対立していたが、その精神状態について「長い間うつに悩まされてきた」と自身のツイッターで告白し、世界を驚かせた。

 現在世界ランキング2位、全仏では第2シードで、活躍が期待されていただけに残念でならない。問題が改善され、再びコートに戻ってこられるよう心から願う。

 人種差別撤廃運動などでも発言する大坂選手は、競技外の場でも大きな影響力がある。今回自らの弱い部分を告白し、現状を変えようとしたことを重く受け止めたい。

 大坂選手は2018年の全米オープンで日本勢として初めて四大大会のシングルスを制し、全豪など四大大会で通算4勝した。うつになったのは18年以降で、対処に苦しんできたという。世界で戦うプレッシャーや一挙手一投足が注目される環境が相当な重荷になったのだろう。

 全仏開幕前の投稿で、会見に応じない理由を「心の健康状態が無視されている」「自分を疑うような人の前には出たくない」とした。

 主催者側は会見拒否はルール違反として、大坂選手に1万5千ドル(約165万円)の罰金を科した。四大大会への出場停止になる恐れが出てきたうえ、他の選手からも「会見は仕事の一部」などと指摘され、いっそう追い詰められた。

 しかし本人が突然棄権を表明し、心の苦しさを打ち明けたことで、状況は一転した。テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手は「ハグしてあげたい。私はそれがどんなことかを知っている」と理解を示した。

 四大大会の主催者も「意義のある改善を目指したい」との声明を出した。まずは選手本人との話し合いを重ねてもらいたい。大坂選手は、記者対応のルールが「時代遅れ」と述べた。不調でも質問に応じる場面は避けられないが、会見の在り方なども議論する必要があろう。

 華々しく活躍しながら精神面で悩むトップアスリートは少なくない。Jリーグ・ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手はうつの経験を公表しており、今回の告白に「共感しよう」と呼び掛けた。水泳のイアン・ソープ選手やマイケル・フェルプス選手もうつに苦しんだ。

 スポーツ界全体で、選手の精神面に配慮し、心の健康を支える仕組みづくりを進めるべきだ。

 コロナ禍の下、開催の可否を巡って揺れる五輪を前に、各競技の代表選手らは厳しい精神状態の中で準備を進めている。五輪選手に対する心理的なサポートも不可欠だ。

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