社説

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 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志26人が、東京五輪・パラリンピック開催によるリスクと対策についての提言を、政府と大会組織委員会に提出した。無観客での開催が感染拡大リスクが最も低く、「望ましい方法」とした。科学的な知見とデータに基づいた結論である。

 尾身氏は「リスクを評価し、伝える責任がある。それを採用するかどうかは主催者の判断」と述べた。

 10都道府県に発令中の緊急事態宣言は沖縄を除いて解除されるが、変異株の影響による感染再拡大が懸念される。国民には五輪の開催自体に否定的な声が根強い。感染が収束しない中で開催に踏み切るなら、無観客とするのが、安全と両立させる最善の道ではないか。政府と組織委は提言を真剣に検討すべきだ。

 提言は、五輪が他のイベントに比べて大会規模や国民の注目度が別格で、感染拡大による医療体制の逼迫(ひっぱく)を招く恐れがあると分析している。

 主な開催地となる東京では既に人出が増えている。さらに五輪とパラリンピックの開催時期が夏休みやお盆の旅行、帰省と重なり、感染が全国に広がる可能性があるとした。

 これに対し、組織委の橋本聖子会長は提言に理解を示しながらも「政府の方針を踏まえて観客の上限を決めたい」と述べるにとどまった。

 菅義偉首相はこれまで有観客を前提とした発言を繰り返している。緊急事態宣言を巡る判断では尾身氏らの助言を仰ぎ、都合が悪いときは耳を貸さない態度は理解に苦しむ。

 提言は「次善の策」として、観客を入れる場合の条件も示した。他の大規模イベントよりも厳しく抑え、観客を開催地の住民に限る必要があるとした。感染拡大の予兆があれば無観客に切り替え、緊急事態宣言などの対策を取るよう注文した。

 政府は、宣言などの解除後に大規模イベントの観客を上限1万人にする経過措置を決めた。五輪の観客上限もこれに準じる方向だ。だが五輪では、短期間で多数の競技が行われ全国から観客が集散する。プロ野球やJリーグと同列に扱えないことは専門家の指摘を待つまでもない。

 東大の研究チームは、五輪で人の移動が2%増えれば東京の1日当たりの感染者数が10月に千人を超え、6%の増加なら1600人を超えると試算した。人の移動を極力抑えるのが望ましいことは明らかだ。

 政府と組織委、東京都、国際オリンピック委員会などは5者協議を週明けに開き、観客数を決める。菅首相は五輪開催の前提を「安心安全」と言い続けてきた。政府には、国民の命と健康を最優先にした判断を改めて求める。

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