社説

  • 印刷

 日本が人権をどこまで重視する国かが問われる事例である。

 サッカー・ワールドカップ予選で、ミャンマー国軍への抗議の意思を右手のしぐさで表明した同国の代表選手が、日本にとどまる決断をした。「帰国したら命の危険がある」として、きょうにも日本政府に難民認定を申請する意向だ。

 2月の軍事クーデター以降、ミャンマー国内では武力弾圧が続き、人権団体によると800人以上が犠牲になっている。6千人以上が逮捕され、多くが今も拘束されている。

 国際試合の場で国軍への「反対」を表明すれば、自分だけでなく周囲にも危険が及びかねない。ぎりぎりまで悩み抜いた末の行動だろう。

 勇気を振り絞った選手を、国境を超えて支えたい。政府は難民として受け入れるべきである。

 申請を希望しているのはピエ・リヤン・アウン選手(27)で、5月28日にあった日本戦での国歌斉唱の際、カメラの前で右手の指3本を立てて見せた。指には「WE NEED JUSTICE(私たちに正義が必要)」と記されていた。

 3本指を掲げるのは米国ハリウッド映画に由来する抗議のポーズで、香港の民主化デモでも若者らが用いるなど、世界中に広がっている。ミャンマーでも、反独裁や民主派支持の象徴的な行動とされている。

 アウン選手は「国軍はニワトリ1羽を絞め殺すかのように国民を撃ち殺しており、許せない」と憤る。祖国でも抗議デモに参加した。

 だが、国軍はクーデター後に刑法を改正して取り締まりを強化している。このまま帰国すれば逮捕される可能性が極めて高い状況だ。

 政府は、日本在留の継続を希望するミャンマー人に在留期間延長を認める緊急避難措置を発表した。当然の対応である。

 日本は難民条約に加入しており、迫害から逃れて国外に出た人を保護する義務を負う。難民として認定されれば「定住者」の在留資格が付与され、送還の恐れはなくなる。

 審査する法務省・出入国在留管理庁は迅速に手続きを進め、身の安全を保障しなければならない。

 ただ、日本の難民認定は申請の1%程度にとどまるのが現状だ。2019年は44人で、5万人以上を受け入れたドイツと比べて桁違いに少ない。以前から「保護すべき人を保護していない」と批判されてきた。

 政府は先の通常国会でも、難民申請を繰り返す外国人の強制送還の手順を定めた入管難民法の改正を目指したが、批判の高まりで断念した経緯がある。これを機に、人道的な保護を重視する対応へと、入国管理のあり方を根本的に改めるべきだ。

社説の最新
もっと見る
 

天気(7月29日)

  • 32℃
  • ---℃
  • 30%

  • 33℃
  • ---℃
  • 30%

  • 33℃
  • ---℃
  • 20%

  • 34℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ