社説

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 専門家の警告や国民の懸念から目を背けた結論であり容認できない。

 7月23日に予定される東京五輪開会式まで1カ月。東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などの5者協議があり、会場に観客を入れて開催することを決めた。上限は定員の50%以内で、最大1万人とする。

 協議に先立ち、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は、医療の逼迫(ひっぱく)などを懸念して「無観客が望ましい」と提言した。京都大などの研究チームも、有観客の場合、感染者が1万人増えるとの試算を公表している。

 19~20日に共同通信が実施した世論調査では「中止」「無観客で開催」との回答が計7割を超えた。9割近くが五輪開催による感染拡大を不安に感じている。政府などは無観客を軸に再検討すべきだ。

 尾身氏らは、観客を入れる場合の「次善の策」として、観客数を他の大規模イベントよりも厳しい基準にすることや、観客を開催地の住民に限ることなども注文した。

 5者協議の決定は、緊急事態宣言などを解除した後の経過措置として政府が示した大規模イベントの上限に準じたという。だがこれとは別に大会関係者らの入場を認め、開会式の入場者は2万人程度になるとの見方もある。学校単位での観戦も別枠とする。なし崩し的に規模を拡大しようとしているとしか思えない。

 各国から数万人の選手、関係者が訪れる際、感染者が入国する可能性は否定できない。実際、来日したウガンダ代表選手団は、事前にワクチン接種や出国前検査を受けていたにもかかわらず、陽性者が出た。

 観客の行動をいかに抑制できるかも課題となる。販売済みのチケット364万枚のうち、上限規制を適用しても272万枚分の観客が往来する。夏休みやお盆の人の移動とも重なる。選手や関係者は一般市民と接触しないとされるが、競技前後に会場周辺で観客が密集するのは避けられない。直行直帰が徹底されなければ新たな感染を招く恐れがある。

 専門家有志らは感染拡大の予兆があれば、無観客への切り替えも求めている。菅義偉首相は5者協議の当日になって「緊急事態宣言が出れば無観客も辞さない」と述べたが、どんな状況なら宣言を出すのか。科学的な根拠に基づく判断基準を示さないのは無責任というほかない。

 五輪開催と緊急事態宣言が重なるような事態こそ、政府の結果責任が厳しく問われることを忘れてはならない。政府や組織委、IOCなどは「有観客ありき」の結論を再考するよう、強く求める。

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