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 中国共産党や政府への批判的姿勢で知られた民主派の香港紙「蘋果日報(リンゴ日報)」が、廃刊に追い込まれた。1年前に施行された香港国家安全維持法(国安法)違反容疑による幹部らの相次ぐ逮捕、社の資産凍結など、治安当局があの手この手で締め付けを強めた結果である。

 中国本土の共産党一党独裁に準じた統制強化で、香港の「報道の自由」は事実上、封殺された。暴政の極みと言うほかない。

 習近平指導部や当局の言論弾圧に強く抗議する。24年前の香港返還時に「一国二制度」を50年間維持するとした国際公約を順守し、直ちに弾圧をやめるよう求める。

 リンゴ日報が24日に発行した最後の朝刊の部数は、過去最高の100万部に達した。普段の約10倍に当たり、香港の人口7~8人に1人に行き渡る大量の部数だが、街頭の新聞スタンドでは入荷のたびに売り切れ状態となった。

 ほとんどの香港メディアが共産党・政府批判を控える中、「香港人の心の声を伝える最後の新聞」と言われる独立不羈(ふき)の姿勢を貫いた。人々が先を争うようにリンゴ日報を手に取ったのは、自由を守り抜きたいという民意の表れにほかならない。

 「痛みをこらえて香港人にさよならを告げることになった」「リンゴは土の下に埋葬され、その種が成長して、より大きく美しいリンゴをたわわに実らせる」

 最後の紙面に掲載された惜別の辞と、将来の復活の誓いは、「6・24」の日付とともに苦渋の記憶として人々の心に刻まれただろう。

 リンゴ日報は、実業家の黎智英(れいちえい)氏が1995年に創刊した。7年前の大規模デモ「雨傘運動」で政府批判を展開し、自身も座り込みに参加し身柄を拘束されたことがある。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする2年前の逃亡犯条例改正の動きや、反政府活動の取り締まりを目指す国安法にも正面から異を唱えた。

 民主活動家の周庭氏と並ぶシンボル的存在となった黎氏を、警察は捜査対象とした。「外国勢力との結託による国家安全危害」の容疑で逮捕され、無許可集会組織罪などで実刑判決を受けて現在、服役中だ。

 当局はこれまでに編集幹部ら計7人を「記事で外国に香港、中国への制裁を呼び掛けた」などとして逮捕し、グループ企業を含む資産凍結で印刷不能の状態に追い込んだ。

 中国共産党は7月1日に創建100年を迎える。習指導部は、目障りなリンゴを握りつぶせば威信を保てると考えたのだろう。だが、国際社会の非難で逆に孤立を深める事態を招いている。強権支配がもたらす負の側面の大きさを考えるべきだ。

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