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 大学入試改革の「2本柱」が頓挫する公算となった。文部科学省の有識者会議は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験と記述式問題の導入について「実現は困難」とする提言案を示した。入試の根幹にかかわる採点の質や公平性に課題が残るというのが主な理由である。今夏にも正式に白紙撤回される。

 当然の結果といえる。専門家らが制度設計のずさんさを指摘し、抜本的な見直しが求められてきた。文科省はもっと早く失敗を認め、方向転換するべきだった。

 2本柱は、今年1月の共通テスト初実施から導入される予定だった。ところが2019年、本番の約1年前という土壇場で見送られた。その際、萩生田光一文科相は「自信を持って受験生に薦められる制度になっていない」と欠陥を認めた。

 大学入試センター試験の後継となった共通テストは約50万人が受ける。拙速に変えようとして、全国の受験生を混乱させた文科省の責任は極めて重い。経緯を検証し、丁寧に説明せねばならない。

 有識者会議は、2本柱の初年度導入を見送った直後に設けられた。大学教員を中心に高校教員や高校のPTA関係者ら18人で構成する。

 提言案は、英語民間検定の活用について、会場が都市部に偏り受験料が高額であることから、家庭の経済状況や居住地で受験機会に差がつく恐れがあると指摘した。

 国語と数学で出題が予定されていた記述式については、短期間で大量の答案を正確に採点するのは難しいとした。いずれも当初から批判されていた点である。

 一方、英語民間検定は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を効率的に測ることができると認め、各大学の個別入試では、記述式とともに導入を進める方向性を示した。その上で、検定の会場拡充や低所得者層への受験料減免を国が主導して議論するよう求めた。

 入試の公平性、公正性を確保するには適切な情報公開が鍵となる。医学部入試で性別や浪人年数による差別が発覚した問題は記憶に新しい。各大学は合否判定の基準や解答例、出題意図など、入試関係の情報をより積極的に公開する必要がある。

 文科省は夏をめどに25年以降の大学入試の指針を公表する。再度の失敗は許されない。コロナ禍の入試で浮き彫りになった課題も整理し、安全で確実な指針にしてもらいたい。

 今回の大学入試改革は、安倍政権時代の教育再生実行会議に源流がある。グローバル人材を求める産業界の強い意向を受け、官邸主導で進められた。教育現場の声を軽視した政治の責任も厳しく問われるべきだ。

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