社説

  • 印刷

 政府は、新型コロナウイルスワクチンの企業や大学などでの職場接種の申請受け付けを急きょ停止した。想定を超える申請が殺到し、接種に使われる米モデルナ製ワクチンの供給が追いつかなくなったためだ。

 与党からは、国と自治体による大規模接種分を回すなどして早期再開を求める声が出ているが、見通しは立っていない。このまま打ち切られる可能性もあるという。

 開始から間もない方針転換で、準備を進めていた企業などの混乱は計り知れない。政府は見通しの甘さを猛省し、停止の経緯と再開の可否についてきちんと説明するべきだ。

 混乱は自治体の現場でも起きている。7月後半以降のワクチン配分量が政府から示されないなどで、兵庫県内の複数市町で64歳以下の接種予約が滞っていることが分かった。

 米ファイザー製を含めたワクチン供給量は全国民分を確保していると政府は強調するが、実際に大きな混乱が生じているのはなぜか。

 菅義偉首相は「1日100万回」「11月末までに希望者全員に」などの数値目標を掲げた。これを達成するため、準備不足にもかかわらず、スピード重視で進めようとした無理がたたったのは明らかだろう。

 政府は態勢を早急に立て直し、今後のワクチン供給量と配分計画を明確に示すべきだ。

 職場接種は、現役世代の接種を加速させ、社会全体を感染から守る効果への期待が大きい。

 だが課題も多い。1カ所で最低千人程度に接種するのが要件とされ、医師や会場は自前で確保しなければならない。すぐ対応できる大企業が先行する一方、国内企業の大半を占める中小企業にはハードルが高く、不公平感は否めない。

 温泉地や業界団体が同業各社を集めて共同実施にこぎつけた例もあるが、医師や会場が確保できず断念した企業もある。政府は小規模でも接種が可能な仕組みや、負担軽減に向けた支援拡充を検討するべきだ。

 一方、「打ち手」の争奪戦が起きれば、軌道に乗りつつある自治体の接種に影響しかねない。国と自治体、医師会などが連携して接種体制の再点検に努めねばならない。

 接種の本格化に伴う同調圧力にも注意が必要となる。持病や医学的な理由で接種を受けられない人や、副反応への不安などから接種を望まない人もいる。接種の強要や、打たない人が不利益を被るような対応があってはならない。

 今後、接種対象となる若い世代には高齢者と比べて副反応が出やすいとの報告もある。政府や自治体は、丁寧な情報開示と相談窓口の充実に取り組んでもらいたい。

社説の最新
もっと見る
 

天気(9月27日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ