千葉県八街(やちまた)市で下校中の小学生の列に大型トラックが突っ込み、児童5人が死傷する事故があった。同県警は運転手を現行犯逮捕し、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで送検した。運転手は「酒を飲んだ」と供述しているという。
許し難い事故だ。理不尽に命を奪われた子どもたちや、家族の心中を思うと胸が痛む。
事故後、菅義偉首相は「通学路の総点検を改めて行う」と述べた。国や自治体は危険な箇所を速やかに洗い出し、必要な対策を早急に進めるべきだ。
子どもが通学路で事故に遭う悲劇は繰り返されている。2012年、京都府亀岡市で集団登校の児童らに車が突っ込み、3人が死亡、7人が負傷した。18年には岡山県赤磐市で児童5人が死傷、19年にも大津市で保育園児ら16人が死傷している。
文部科学省は亀岡の事故後、全国の通学路の緊急点検を実施した。7万カ所以上の問題点を確認し、その9割以上で改善が図られていたはずだった。
ところが八街市の事故現場では、PTAなどが再三ガードレール設置を要望していたのに、後回しにされていた。路側帯の白線塗装やカラー化などの措置もできなかったのか。同市の責任も重いというしかない。
今回の事故は、飲酒運転の問題も改めて浮き彫りにした。
07年の改正道路交通法施行で飲酒運転の罰則が引き上げられた。14年には自動車運転処罰法が施行された。こうした対策の結果、飲酒運転による死亡事故は、06年の612件から20年の159件にまで減少した。
ただし近年は200件前後で下げ止まり、厳罰化だけで事故防止を図るには限界がある。
八街市で事故を起こしたトラックは自家用の「白ナンバー」で、アルコール検知器による検査は義務づけられていなかった。国はこうした安全管理の課題も見直すべきだ。
スウェーデンなどでは、ドライバーの息からアルコールを検知すればエンジンがかからない装置も導入されている。
子どもたちを不慮の事故から守るのは大人の責任である。行政や学校による対策に加え、社会全体であらゆる手だてを講じなければならない。
