社説

  • 印刷

 東京都に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が再発令されるのを受け、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などが5者協議を開き、東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県の会場を無観客にすることを決めた。

 5者協議で6月に決めた「50%以内、最大1万人」の上限は修正を余儀なくされた。リバウンド(感染再拡大)の兆候をよそに、まん延防止等重点措置の延長でしのごうとした甘い見通しが打ち砕かれた形だ。

 6月の決定前、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は「無観客が望ましい」と提言していた。政府や都、組織委が軽視したことへの批判は免れない。

 開幕2週間前まで二転三転した判断に、チケット購入者やボランティアら多くの人が翻弄(ほんろう)された。有観客での開催にこだわり迷走を重ねた菅義偉首相の責任は極めて重い。

 東京五輪は緊急事態宣言下で開かれる異例の大会となる。国民の不安は大きいと言わざるを得ない。

 感染抑止のために国民に我慢を強いる一方で、世界最大級のイベントである五輪を開く。それ自体が矛盾をはらむ。首相は会見で「全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていける」と述べたが、不安の解消につながる具体策は示せなかった。感染状況がさらに悪化する事態に陥れば、期間中でも大会の縮小や中止をためらってはならない。

 開幕が迫り、各国の選手団が続々と来日している。既に陽性者が出ており、ワクチン接種や出国前検査を受けていても、選手らの感染を防げないのは明らかだ。

 政府や組織委は、選手らが外部との接触を絶つ「バブル方式」が有効とする。ところが関係者は条件付きで飲食店などを利用できるため、一般市民と接触する可能性を残す。リスクを完全に抑えるのは難しい。

 懸念されるのは、医療体制の逼迫(ひっぱく)を招く事態だ。選手や関係者らの感染が相次げば、既に使用率が上がりつつある東京などの病床にも影響する恐れがある。

 宮城県、福島県など首都圏以外の会場に観客を入れる判断も疑問である。全国的に往来が増え、感染が拡散する可能性を考えれば、全会場の無観客を決断すべきではないか。

 無観客も次善の策でしかない。開催に踏み切るなら、あらゆる手だてを講じ、感染拡大の要因を取り除く必要がある。IOC委員らの「別枠」観戦など到底認められない。

 政府が示すべきは、国民の理解と協力が得られる具体策である。命と健康より五輪が優先されるようなことはあってはならない。

社説の最新
もっと見る
 

天気(9月27日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ