社説

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 「強国」を目指す中国の軍事的圧力は、日本にとって厄介な問題となってきた。今年の防衛白書が昨年版に続き、中国の動向を「安全保障上の強い懸念」と表現したのは、防衛当局の危機意識の表れだろう。

 沖縄県・尖閣諸島周辺で中国船が領海侵入を繰り返し、自衛隊は離島防衛を担う水陸機動団を創設した。バイデン米政権も中国に対抗し、東アジアの緊張は高まりつつある。

 台湾周辺で軍事衝突が起きた場合は、日本への影響は避けられない。「台湾情勢の安定は日本の安全保障や国際社会にとって重要」と白書が明記したのは当然だ。

 ただ、「平和国家」の日本に求められるのは、米軍と歩調を合わせた「力」の増強ではない。不毛な争いを回避するための対話を深める、しなやかな外交力が求められる。

 今回、防衛白書は競争が激化する米中関係に関する項目を新設し、両大国の動向に焦点を当てた。

 日本は、中国の海洋進出に対して日米安保条約に基づく米国の防衛義務を後ろ盾としてきた。日米の同盟関係が安保政策の土台と言える。

 安倍政権の時代に憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認し、米軍と自衛隊の一体化を推し進めた。「違憲」の批判を押し切って安保関連法を施行したが、中国の台湾への軍事侵攻が懸念される状況となり、米軍と共同で武力行使に踏み切るような展開も否定できなくなった。

 米国への攻撃が日本の「存立危機事態」と認定されれば、集団的自衛権行使の要件が整うからだ。

 実際、麻生太郎副総理兼財務相は「台湾で大きな問題が起きれば、存立危機事態に関係すると言ってもおかしくない。日米で台湾を防衛しなければならない」と述べた。強硬論が飛び交う状況が気にかかる。

 一方、中国は南シナ海でもほぼ全域で主権や権益を主張する。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が主張を退けても、軍事拠点などの整備を続け、周辺国と対立している。

 「自由で開かれたインド太平洋」を米国とともに呼び掛ける日本も批判の声を上げ続けねばならない。

 とはいえ白書によれば、中国の艦艇や戦闘機の保有数は日本を上回る。際限のない軍拡競争に陥れば危機は深まるばかりだ。

 菅義偉首相は「対中包囲網はつくらない」と語るなど、党内の強硬論と一線を画しているように映る。ならば中国への「懸念」を理由に、防衛費のさらなる増額を求める動きには一定の歯止めをかけるべきだ。

 中国の身勝手な行動には強く反対する。同時に、自制と姿勢の転換を促し続ける。平和を希求する努力こそが安全保障の核心である。

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