社説

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 兵庫県知事選は、元大阪府財政課長の斎藤元彦氏が、新人5人による激戦を制し、初当選した。20年ぶりの新しい兵庫のリーダーは戦後7人目、最年少となる。全国の知事では2番目に若い43歳である。

 新型コロナウイルス対策、人口減少、経済・雇用、医療・介護など山積みの課題を解決していくには、これまでの発想や手法だけではおぼつかない。コロナ収束後の社会も見据え、斎藤氏が掲げた県政の「刷新」を、民意が支持したと言える。

 斎藤氏に発信力と行動力を期待した有権者は多いだろう。ただ、掲げた政策は具体性に欠けるものも少なくない。施策の立案、計画の段階から県民と情報を共有し、理解を得ながら県政運営を進め、兵庫の将来像を描いてもらいたい。

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 井戸敏三知事の今期限りでの退任を受けた今回の選挙は、5期に及ぶ県政の評価や、何を継承し、何を刷新するかが争点となった。

 井戸県政を11年にわたり副知事として支えた金沢和夫氏は、井戸知事の後援会組織や支持団体をほぼ引き継いで選挙戦に臨んだ。

 県議会最大会派の自民党が金沢氏を支援する一方、一部県議はこの方針に反発し、自民党本部も最終的に日本維新の会が推す斎藤氏への推薦を決めた。異例の保守分裂選挙となり、業界団体の支持も分かれた。

 斎藤氏の街頭演説や集会には菅政権の閣僚らが続々来援し、吉村洋文大阪府知事、松井一郎大阪市長ら維新幹部も応援に入った。これに対し金沢氏は「県民党」を掲げ、「継承と改革はセットだ」と禅譲批判に反論した。井戸知事も金沢氏を精力的に援護したが、防戦に追われた。

 事実上の一騎打ちは、斎藤氏が幅広い支持を集め、県民の命と暮らしを守る責務を託された。とはいえ、対立候補の主張にも耳を傾けるべき点はある。例えば、中央官僚出身知事が半世紀以上続くことの弊害はないのか。結果を謙虚に受け止め、実績で応えていかねばならない。

コロナ対応の検証を

 新知事が最優先すべき課題は、新型コロナウイルスへの対応だ。

 兵庫県はまん延防止等重点措置が解除されたものの、感染者は反転増加している。「第4波」では重症者用病床が足りず、入院先が決まらずに亡くなる人が相次ぐなど、医療崩壊の危機に直面した。病床の確保を急ぎ、一般診療への影響を抑える対策を着実に進める必要がある。

 感染力が強い変異株の拡大も懸念される。政府がコロナ対策の「切り札」とするワクチン接種について、斎藤氏は公約で「全医療機関で可能に」などと訴えた。市町との連携を強め、接種を加速させなければ、県民の期待を裏切ることになる。

 地域経済への打撃が長期化し、苦境にある事業者や働く人たちの困窮は切実さを増している。これまでのコロナ関連の施策や予算規模が十分だったのか検証が求められる。総務省や自治体での実務経験も生かし、必要な支援に手だてを尽くし、改めるべきは改める手腕が問われる。

迫られる政策の選択

 コロナ対応以外にも課題は山積している。県財政は改善傾向にあるとはいえ、阪神・淡路大震災からの復興で背負った県債の償還は続く。行財政改革の道筋をどう描くのか。若い世代の人口流出や過疎化にどう歯止めをかけるのか。南海トラフ地震など災害への備えも急がれる。

 神戸新聞社が有権者に実施した出口調査では、最も力を入れてほしい政策として「新型コロナ対策」「行政改革・財政再建」が多く挙がり、変革への期待がうかがえた。

 斎藤氏は「ゼロベース」での事業見直しを唱えた。限られた財源を有効に生かすには、前例や慣例にとらわれず、今まで以上に政策の選択を迫られる。多選知事の下でトップダウンが浸透した県庁組織の意識改革にも取り組まなければならない。

 20年ぶりの新知事を選ぶ機会にもかかわらず、投票率は低調で、県民の熱気は乏しかった。この点も真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 県議会との関係にも注文をしておきたい。最大会派自民党の分裂もあり、斎藤氏を支持する議員は少数となる可能性がある。緊張関係も生まれるが、両者は議論を尽くし、是々非々の態度で臨んでほしい。

 斎藤氏の首長としての力量は未知数だが、選挙戦で広い県内を回り、都市や農山漁村で多くの人たちと接し、地域の課題や生活の実情を見聞きしたはずだ。新知事には県民との対話を重ね、信頼関係を築き、具体的な政策を打ち出す責任がある。

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