社説

  • 印刷

 全ての労働者に例年10月から適用される最低賃金について、国の中央最低賃金審議会が2021年度の目安を決めた。

 現在、全国平均で902円の時給を一律28円引き上げ、930円とする。これから都道府県ごとの地方審議会が協議する。目安通りに実施されれば、全都道府県で800円を上回る。兵庫県は928円となる。

 昨年度は、新型コロナウイルスの感染拡大による企業への打撃に配慮し、平均1円増という事実上の据え置きで決着した。それが一転し、時給で示す現行方式に変わった02年度以降で最大の上げ幅となった。

 秋までにある衆院選を意識して、「より早期に千円」に引き上げる方針を掲げる菅政権の意向が、色濃く反映されたとみられる。

 最低賃金は、労働者にとって最も重要な安全網(セーフティーネット)だ。日本の水準は世界的にも低く、1300円前後の欧州などと比べて明らかに見劣りする。継続的な底上げが必要なのは間違いない。

 コロナ禍で、私たちの生活を支える業務を担う「エッセンシャルワーカー」の苦境が、さらに鮮明になった。家計を支える稼ぎ手でありながら、非正規雇用で最低賃金に近い水準で働く人は多い。格差是正の観点からも、着実な待遇改善につなげねばならない。

 一方で、引き上げはとりわけ中小企業の経営を圧迫する要因になりかねない。賃上げを可能にする環境整備には、助成金の拡充など国によるきめ細かな支援策が欠かせない。

 付加価値の向上やデジタル化への対応、発注元との取引価格の適正化などが課題として挙げられる。中でも、飲食や宿泊など長引くコロナ禍の影響で困窮が深まっている業種への配慮を求めたい。

 このたびの国の審議会は異例の経緯をたどった。官邸主導で結論が決まっていたとの疑念から、経営側の委員が反発し、採決を求めるなど全会一致の原則が崩れた。

 中小企業が加盟する日本商工会議所の三村明夫会頭は「先行きが不透明な中、到底納得できない」とのコメントを出し、政府の方針追認ともとれる審議会の形骸化を批判した。

 休業や営業時間短縮の要請に応じた飲食店への協力金の支払い遅れなどが、事業者の死活問題になっている。後手に回る政府のコロナ対策が企業側の反発や不安の背景にあることを、政権は自覚すべきだ。

 都道府県間の格差も依然大きい。最も高い東京の1041円と、最も低い東北や九州など7県の差は221円になる。国は各地域の実情を考慮しつつ、格差を縮めるための施策を積極的に推進してもらいたい。

社説の最新
もっと見る
 

天気(9月27日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ