社説

  • 印刷

 明石市・大蔵海岸の花火大会会場とJR朝霧駅を結ぶ歩道橋で多数の見物客が倒れ、11人が死亡、247人が負傷した明石歩道橋事故から、きょうで20年となる。

 楽しい夏の思い出になるはずの催しが暗転し、幼い子どもや高齢者が犠牲になった悲劇は歳月を重ねてなお痛ましい。事故の経験と教訓を社会全体で継承し、惨事を繰り返さない誓いを改めて心に刻みたい。

 事故は長さ104メートル、幅6メートルの歩道橋上で起きた。会場に向かう人と帰途に就く人がひしめき合い、6千人以上が滞留して「群衆雪崩」が発生、人々が折り重なって倒れた。

 犠牲になったのは9歳以下の子ども9人と70代の高齢者2人だった。負傷者の7割は女性である。自然災害と同様に、雑踏事故においても被害が「弱者」に集中するという事実は忘れずにいたい。

 事故を巡り、神戸地検は明石署と明石市、民間警備会社の5人を業務上過失致死傷罪で在宅起訴し、全員が有罪となった。雑踏事故では初めて警察の過失責任が認められた。

 遺族が警察や市などを相手に起こした民事訴訟でも、神戸地裁は「被告らの責任、とりわけ事前準備段階の責任は極めて重い」と述べた。

 不起訴になった同署の元副署長は検察審査会の議決に基づき、2010年に全国で初めて強制起訴された。元副署長は公訴時効により「免訴」となった。だが大阪高裁は警備の計画段階からの不備を指摘し、「十分な対策を講じていれば事故は回避できた」と予見可能性を認めた。

 最終的な司法判断まで15年の年月を要したものの、遺族らは「真相解明が進んだ」と評価した。裁判の過程で導き出された教訓を、警察や自治体は肝に銘じてほしい。

 事故の翌年、同市の事故調査委員会がまとめた「調査報告書」も「転倒者が続出し、死傷者が出る恐れがあったことは予見できた」と結論付け、再発防止策を提言した。

 事故のリスクが軽減できない場合の開催場所の変更や、過去の事故事例の収集、組織間での情報共有化、警察からの指導助言の徹底、救急医療体制の確立-などである。実際の事故を分析した貴重な内容であり、今後も参考にすべきものだ。

 歩道橋事故後、全国で雑踏警備の強化が図られ、警察などによる対策も改善した。今後はいかに記憶の風化を防ぎ、人命最優先の意識を徹底できるかが課題となる。当面は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ密集対策も求められる。

 教訓の継承を怠らず、事故防止策に愚直に取り組む。新たな被害を生まないためには、こうした地道な努力を積み重ねていくしかない。

社説の最新
もっと見る
 

天気(9月27日)

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ