東京パラリンピックが、きょう開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大により、五輪と同様に1年延期され、全ての会場を原則無観客にする、過去にない大会となる。
パラリンピックは障害者スポーツ最大の国際総合大会である。第1回は1960年のローマ大会で、「パラ」の名称が本格的に使われたのは64年の東京からだ。大会は共生社会の実現を国内外に訴える絶好の機会であり、完全な形で開催できなかったのは残念というしかない。
2度目となるこの東京大会で、国際パラリンピック委員会(IPC)は、世界人口の15%に当たる障害者約12億人の人権を守るキャンペーン「We The 15」を始める。10年をかけて偏見や差別をなくす運動になるという。世界的な取り組みの起点になる意義は大きい。
ただ、新型コロナの感染状況は極めて厳しい。東京都などの首都圏では、緊急事態宣言が発令されても拡大が収まる気配は見えない。不安視する国民が少なくない中での開催強行であることを、政府や大会組織委員会は忘れてはならない。
大会には史上最多の4500人規模の選手が世界から集まる。基礎疾患を抱える人もおり、感染防止には五輪以上の厳重さが求められる。
主催者側は五輪に続いて外部との接触を絶つ「バブル方式」を守り、検査の回数も増やすとしている。しかしパラリンピックの選手や関係者のうち、陽性者は既に100人を超えている。首都圏では病床が不足するなど医療も逼迫(ひっぱく)している。選手らが感染し、症状が悪化した場合などの対応に不安は消えない。
児童、生徒を対象にした「学校連携観戦プログラム」も懸念材料だ。変異株の流行で若年世代の感染が急速に広がっている。観戦に教育的な意味があるとしても、五輪では中止された東京などで実施する理由にはならない。実行するかどうかの判断を自治体や学校に委ねた対応は、政府の責任放棄にも見える。
無観客とはいえ、大会が国民の感染拡大につながる恐れもある。例えば都内で開催されるマラソンでは、札幌市での五輪マラソンを超える人数が沿道に集まりかねない。観戦自粛を呼び掛けるだけでなく、密集を解消する有効な具体策が必要だ。
東京大会には254人の日本選手団が参加する。兵庫ゆかりのアスリートは、車いすテニス女子の上地結衣選手ら21人に上る。選手らが安心して競技に専念できるよう、主催者側は五輪の反省を生かし、あらゆる手だてを尽くしてもらいたい。
共生社会を目指すには、生命と健康の尊重が前提になるということを政府や組織委は強く意識すべきだ。








