社説

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 横浜市長選で、菅義偉首相が全面支援した前国家公安委員長の小此木八郎氏が、事実上の野党統一候補で新人の横浜市立大元教授、山中竹春氏に大差で敗れた。

 首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染状況が悪化の一途をたどる中、政府の感染防止対策への反発や不信感が影響したのは間違いない。首相は地元横浜での惨敗を自らへの厳しい審判と受け止め、医療体制の強化をはじめとするコロナ対策の立て直しに全力を挙げるべきだ。

 市長選は、コロナ対策に加え、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非などが争点となり、過去最多の8人が立候補した。

 当初、自民党側は情勢を楽観していた節がある。小此木氏のIR反対表明で党の地元組織は分裂したが、IR推進を掲げた現職林文子氏の支持に回った市議は少数にとどまり、公明党と合わせた組織票は野党側を大きく上回ると踏んでいた。

 一方、山中氏陣営は、大学教授時代の研究を生かし「候補唯一のコロナ専門家」をアピールした。行政手腕は未知数ながら「カジノよりコロナ」の訴えが響いたのは、市民の不安の裏返しにほかならない。

 投票率は前回を約12ポイント上回る49%となり、共同通信社の出口調査では支持政党のない無党派層の4割が山中氏に投票した。小此木、林両氏は各1割前後にとどまった。

 感染状況が深刻な都市部で、対策に不満を抱く多くの無党派層が動けば、情勢を覆す可能性がある。それを全国に示した選挙でもあった。

 内閣支持率の下落が続く首相の求心力が、さらに低下するのは避けられない。衆院選が迫る中、自民党内からは「菅首相では戦えない」との声も上がり始めた。

 だが、自分の選挙のために「党の顔」を代えるという小手先の戦略は有権者に見透かされるだろう。

 政府はIRを成長戦略の柱に位置づけてきた。反対に転じた身内の候補をIRの旗振り役だった首相が支援した対応も、その場しのぎのご都合主義に映ったのではないか。

 コロナ対策の問題点を率直に認め、改善策を打ち出して国民の不安解消に努めるのが政権の務めである。IR構想も、誘致合戦から横浜市が撤退すれば見直しを迫られる。

 山積する課題に迅速に対応するために臨時国会を開き、首相が方針を示して与野党で議論するのが筋だ。

 立憲民主党は今回、共産、社民両党と連携し、成果を上げた。ただ、政党支持率は伸び悩んでいる。政権批判票の受け皿となるには、与党以上に謙虚に有権者の声に耳を傾け、説得力のある明確な選択肢を用意して衆院選に臨まねばならない。

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