社説

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 イスラム主義組織タリバンが政権を掌握したアフガニスタンの情勢が、緊迫の度を増している。

 国外退避の希望者が殺到する首都カブールの空港付近で、米兵やアフガン人ら100人超が死亡する爆発が起きた。過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力の自爆テロとみられ、現地は大混乱に陥っている。

 8月末の米軍撤退期限が迫る中、退避支援のため派遣された自衛隊機も、任務が遂行できない状況だ。

 日本の輸送対象は大使館や国際協力機構(JICA)で勤務していた邦人、現地職員、家族など最大数百人に上る。これらの人々が置き去りにされる事態は避けるべきである。

 一刻の猶予も許されない。政府は米軍に協力を要請し、タリバン政権にも働き掛けるなど、安全退避に手だてを尽くさねばならない。

 外務省はタリバンがカブールに進攻した今月15日に大使館を一時閉館し、日本人職員12人は17日に英軍機でアラブ首長国連邦に出国した。だが現地スタッフや家族、JICA関係者などは対象とされなかった。

 米英などは現地スタッフも同様に軍用機で退避させており、日本の対応に疑問の声が上がっていた。

 岸信夫防衛相が自衛隊に輸送機の派遣を命じたのは、23日になってからである。米軍撤退の動きなどをにらみ、事実上27日までの任務完了を目指す時間との闘いとなった。

 ところが26日に自爆テロが起き、退避希望者は誰もカブールの空港に到達できなかった。当初計画した隣国パキスタンとのピストン輸送は実現のめどがたたず、政府の対応が後手に回った印象は拭えない。

 自衛隊機の派遣は自衛隊法84条の4で定める「在外邦人等の輸送」に基づく措置だ。過去、治安が悪化した南スーダンからの大使館職員退避などで4回実施されたが、いずれも少人数にとどまり、外国人も輸送すれば今回が初のケースになる。

 ただ、自衛隊機による輸送は「安全に実施することができると認めるとき」に限定され、テロなどで治安が悪化すれば困難になる。手詰まりの現状を打開するには、これまで以上の外交努力が不可欠だ。

 ブリンケン米国務長官は米国人やアフガン人らの退避支援に「期限はない」と述べ、軍撤退後も継続する方針を明らかにした。日本の退避活動にもぜひ力を貸してもらいたい。

 アフガンではISが一部地域の領有を主張するなど、タリバン以外の過激派組織も存在する。この際、日本との「良好な関係」を望むタリバン側に協力を求めることも検討すべきだろう。非政府組織(NGO)などの民間人も含め、一人も取り残さない努力を政府に強く求めたい。

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