社説

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 アフガニスタンに駐留していた米軍が、8月末の予定より1日早く撤退を完了した。2001年9月の米中枢同時テロへの反撃から始まった「米史上最長の戦争」に、米国が自らの手で終止符を打った形だ。

 ただ、首都カブールを制圧したイスラム主義組織タリバンの攻勢に米国は翻弄(ほんろう)された。追われるような撤退を想定しなかったのなら、判断の甘さが責められても仕方がない。

 軍を派遣していた欧州などの国々や、官民で国の再建を支援した日本は突然、はしごを外される展開となった。自国民や現地協力者らの退避を急いだが、今も多数の人が取り残され、危険にさらされている。

 米国の誤算がパンドラの箱を開けたような混乱を招いたと言える。罪のない多くの人々を危険の渦に巻き込んだ責任を自覚すべきだ。

 米軍の駐留は最大時で10万人規模、戦費総額は2兆3千億ドル(約250兆円)に膨らんだ。死者は2千人を超え、アフガン政府軍や民間人などと合わせた犠牲者は17万人とされる。出口のない介入に幕引きを図る必要があったのは確かだろう。

 長期の武力介入が失敗に終わり、アフガン再建への国際社会の関与は、外交努力と民生支援を軸にした新しい段階に入ったと言える。

 アフガン国内では、タリバンと対立する過激派組織「イスラム国」(IS)系の活動も息を吹き返し、自爆テロで民間人や米兵に新たな死傷者が出た。再びテロの温床になる事態は絶対に避けねばならない。

 米軍は無人機による報復攻撃に踏み切ったが、市民が巻き添えになった。武力による攻撃は外国への憎悪と報復の連鎖を招きかねない。

 当面は国外退避を望む人たちの出国支援が急務だ。バイデン政権はタリバンに協力を働きかけ、混乱の収束に取り組む必要がある。

 一方、日本は自衛隊機などを派遣し、大使館の現地職員ら約500人の退避を試みたが、邦人1人しか移送できずに撤収した。自爆テロなど不測の事態があったとはいえ、政府の対応の鈍さは否定できない。

 この間、菅義偉首相が救出にリーダーシップを発揮する場面がほとんどなかったのはなぜなのか。

 自衛隊法で、自衛隊機による輸送は「安全に実施することができると認めるとき」に限定される。だが、他国のように民間バスのチャーターや米兵の同行を求めるなど、打つ手は他にもあったのではないか。

 国連のグテレス事務総長は「人道的な大惨事が迫っている」と国際社会の支援を訴えた。今後は人道支援の先頭に立つことが、「平和国家」である日本の役割だ。何ができるのか、真剣に考えねばならない。

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