社説

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 世界を揺るがした米中枢同時テロから、きのうで20年を迎えた。ニューヨークの世界貿易センタービルのツインタワーに、ハイジャックされた旅客機2機が衝突した。ビルは崩壊し、別の2機と合わせ、日本人24人を含む約3千人が犠牲になった。

 衝撃的な映像には今も戦慄(せんりつ)を覚える。ビルでの犠牲者は、4割の身元がまだ確認できていないという。癒えることのない遺族の悲しみに心を寄せたい。

 中枢同時テロの後、米国は国際テロ組織アルカイダが主導した犯行として、アフガニスタンへの空爆を始めた。

 この軍事介入は「米史上最長の戦い」になったが、バイデン米大統領は今年4月、アフガン駐留軍の撤退を表明した。その結果、イスラム主義組織タリバンが8月に政権を掌握した。テロ根絶に向け、現地に民主主義を根付かせられなかった米国の責任は重いというしかない。

 米国は米兵ら2461人を失い、戦費2兆3千億ドル(253兆円)以上を投じたにもかかわらず、タリバン政権の復活で取り組みは水泡に帰した。

 タリバン政権はいったん崩壊したものの抵抗は根強く、戦闘は泥沼化した。民主政権で女性の教育参加などが進んだ一方、米国流の民主主義が人々の反感を買う部分もあった。価値観の押しつけでは民主化が進まないことを理解すべきだった。

 撤退の最終局面では過激派組織の自爆テロを抑えられず、国外退避を望む米国人やアフガン人協力者ら多くの人が取り残された。市民を危険に巻き込んだ判断は批判を免れない。

 米メディアの最近の世論調査では、中枢同時テロ前と比べて現在の方が「米国がより安全になった」と感じる人の割合は49%で、10年前から15ポイント減った。テロの脅威におびえる米国人の姿がうかがえる。

 暴力に暴力で抗する「憎悪の連鎖」ではテロのない世界を目指すことができないと、私たちはこの20年で学んだ。

 タリバンの統治下では女性や子どもの人権が危ぶまれ、再びテロの温床にならないかとの懸念も強い。米国や日本は「テロとの戦い」を検証するとともにアフガンへの外交努力を続け、人道支援に力を注ぐべきだ。

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