社説

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 北朝鮮が新型長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと、国営メディアが伝えた。ミサイルは領土・領海内に設定した軌道に沿って1500キロ飛行し目標に命中したという。

 事実なら、日本の大半が射程に入ることになる。安全保障上の新たな脅威になりかねず、看過できない。

 北朝鮮は国際社会の非難を無視して核・ミサイル開発を続けており、緊張は高まるばかりである。

 ただ、同国は新型コロナウイルス対策の国境封鎖で食料不足が深刻化しているとみられ、国連が改善の努力を促している。本来、軍事に巨費を投じる余裕などないはずだ。

 周辺国への挑発的な行為を直ちにやめて人道支援を受け入れるよう、金正恩指導部に強く求める。

 巡航ミサイルは、主にジェットエンジンで低空を飛行し、レーダーに捕捉されにくいのが特徴だ。ロケットエンジンで高高度に上昇し、放物線を描いて落下する弾道ミサイルとは異なるタイプの兵器といえる。

 厄介なのは、北朝鮮による巡航ミサイル発射が国連安全保障理事会決議に違反する行動ではないことだ。

 安保理決議は北朝鮮に対し、大量破壊兵器である弾道ミサイルの発射を禁じている。ただ、より小型の巡航ミサイルは対象外で、国連による規制の隙を突いた形となった。

 小型核の搭載が可能な巡航ミサイルの開発・配備は、米国やロシアも進めている。軍事技術の展開にどう歯止めをかけるのか、国際社会に課題を突き付けたともいえる。

 そもそも、車両に搭載された巡航ミサイルの動きは探知が困難で、攻撃への備えは容易ではない。北朝鮮の軍事的な動向は米国が監視しており、同盟国の韓国や日本も連携して対処する。しかし、今回は事前に発射を察知できなかったようだ。

 気になるのが「敵基地攻撃能力」を巡る日本国内の動きである。攻撃される前に他国の施設を破壊する能力のことで、安倍晋三前首相が後継の菅政権に保有に向けた議論の加速を促した経緯がある。

 自民党総裁選への立候補を表明した高市早苗前総務相は「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ」と述べ、岸田文雄前政調会長も積極姿勢を示している。北朝鮮の実験で議論が加速しそうな気配が漂う。

 だが、敵基地の攻撃は憲法が禁じる先制攻撃との区別がつきにくく、「専守防衛」を逸脱する恐れが憲法学者などから指摘されてきた。北朝鮮の「脅威」を理由に実現を目指す拙速は許されない。

 「目には目を」の強硬姿勢は北朝鮮にとって思うつぼだろう。動きを注視し、米韓と情報を共有しながら、努めて冷静に対応すべきだ。

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