社説

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 性犯罪の適切な処罰に向け、刑法の規定を見直すかどうかの本格的な議論が、法制審議会で始まる。強制性交罪や強制わいせつ罪の処罰範囲の拡大などを検討するため、上川陽子法相が諮問した。

 性犯罪に関する規定は、2017年の刑法改正で強姦(ごうかん)罪の名称が強制性交罪になり、法定刑の下限が懲役3年から5年に引き上げられた。

 だが、その後も性犯罪での無罪判決が続くなどしたため、被害者側からさらなる法改正を求める声が強まった。性暴力の根絶を訴える「フラワーデモ」が全国各地で繰り広げられるなどして、当事者以外の国民にも関心が広がった。

 性暴力は心身を深く傷つけ、「魂の殺人」とも言われる。法制審には、被害者の視点を反映した議論を進めてもらいたい。

 最大の論点は、加害者からの「暴行・脅迫要件」の見直しである。強制性交罪などの成立要件になっているが、暴行や脅迫がなくても抵抗ができない状態で被害に遭う例は多く、実態に合わないとの指摘がある。

 被害者側は「相手の同意を得ない性交は許されない」とし、その処罰を求めている。社会常識からみても十分理解される主張である。

 法制審に先立つ法務省の検討会では、「不同意」のみを要件とすれば処罰の範囲が不明確になり、冤罪(えんざい)が生まれる恐れがあるとの反対意見も出て、結論には至らなかった。

 欧米などでは既に、不同意の性交の処罰に踏み出している。スウェーデンは18年に法律の規定をつくったが、専門家は「同意の有無を慎重に捜査しており、冤罪は問題になっていない」とする。こうした先進的な事例も参考になるだろう。

 法制審では、強制性交罪で10年としている公訴時効の撤廃や延長、性交同意年齢の13歳からの引き上げも審議される。性犯罪は精神的ショックや社会の偏見などから、被害の申告に時間がかかる場合がある。立件への障壁は低くするべきだ。

 加えて、教師や上司といった地位や関係性を悪用した性行為の処罰規定や、配偶者間の強制性交罪成立の明確化も課題だ。被害に苦しむ人を増やさないよう、丁寧かつ速やかな検討が求められる。

 性暴力を未然に防ぐには、法改正と合わせて性教育の拡充も欠かせない。「何が加害行為になるのか」を理解し、判断できるような教育の方法を確立する必要がある。

 上川法相は会見で「性犯罪被害は非常に根深く、長期に傷痕を残す」と述べた。性被害の泣き寝入りをなくすためにも、当事者の声に真摯(しんし)に耳を傾け、実効性のある法改正につなげなければならない。

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