社説

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 今年のノーベル物理学賞が、愛媛県出身で米プリンストン大上席研究員の真鍋淑郎さん(90)ら3人に決まった。二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの増加が、地球温暖化に影響することを明らかにした。環境問題への警鐘を鳴らす先駆的な研究が高く評価された。

 日本人のノーベル賞受賞者は28人目で、2019年化学賞の吉野彰旭化成名誉フェロー以来、2年ぶりの快挙だ。栄誉を心からたたえたい。

 物理学賞の受賞者は、湯川秀樹京都大教授から数えて12人目となる。真鍋さんは米国を拠点にするが、東京大理学部と大学院で地球物理学を学んだ。物理学研究が日本のお家芸であることを改めて示すと同時に、物理学賞では異例の地球科学の分野で選ばれた意義は大きい。

 世界では温暖化によるとみられる熱波や豪雨が頻発している。この受賞で気候変動への関心が高まり、対策が促されることが望まれる。

 授賞理由は、CO2濃度の上昇で、地球表面の温度がどのように上がるのかを解明した貢献による。

 真鍋さんは1960年代、太陽から届いた熱と大気の循環による相互作用を分析する「気候モデル」を開発した。計算の結果、CO2濃度が倍になると気温が2度以上上昇するとした。温暖化に人間の活動が関係していることを証明し、気候危機を予測した功績は計り知れない。

 さらに大気の流れと海洋の循環を組み合わせ、長期的な気候変化をコンピューターでシミュレーションする「大気海洋結合モデル」も生み出した。温室効果ガス排出量が年に1%ずつ増えると、特に北半球の一部で温暖化が進むことが分かった。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が90年に出した第1次報告書の執筆にも加わった。これは温室効果ガスの削減義務を課す京都議定書(97年)や、温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定(2015年)にもつながる。真鍋さんの研究が世界を「脱炭素」に向かわせる一助になったと言えよう。

 真鍋さんは1958年に渡米し、米海洋大気局に勤めた。戦後まもない時代に海外で実績を積む努力は、並大抵ではなかったに違いない。

 記者会見では「研究を駆動したのは好奇心」と語った。知的関心に始まり、結果的に社会に貢献する研究は少なくない。日本の科学力低下が指摘されるが、政府や大学は短期的に「役に立つ」研究ばかりに目を向けず、研究予算を確保して基礎学問をしっかり支えてもらいたい。

 真鍋さんは90代にあって古気候学に関心を向けているという。新たな研究成果とともに、これからも若者を科学へ導く活躍に期待したい。

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