米中対立などを背景に、東アジアの安全保障環境は厳しさを増す。岸田文雄首相が衆院選公示日に福島を訪問中、北朝鮮が日本海に弾道ミサイル2発を発射した。新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられ、緊張が高まった。
隣国の中国も国防費を増やし軍備を増強している。習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と強調しており、台湾有事への想定も待ったなしだ。
日米同盟を基軸とする考えは共産党、社民党を除く各党が一致する。インド太平洋地域の緊張を見据え、オーストラリア、インドを加えた枠組み「クアッド」もできた。日本を取り巻く情勢は厳しいが、平和と安定をどう守るのか。各党は戦略や具体的な方策を示す必要がある。
北朝鮮のミサイル発射を受け、首相は日本を狙うミサイルを相手領域内で阻止する敵基地攻撃能力の保有も含め検討を指示した。公明党は「日本だけが特別なものを持つと隣の国々も競争し合う」と否定的で、連立政権としての整合性が問われる。
敵基地攻撃能力を巡っては、立憲民主党が「専守防衛に徹しつつ領土・領海・領空を守る」と慎重姿勢で、共産も反対だ。国民民主党は議論自体には賛成し、日本維新の会は前向きと野党も意見が分かれる。
そもそも、敵基地攻撃能力の保有は憲法に基づく「専守防衛」を逸脱する恐れがある。認めれば安全保障政策の大転換となるが、現実的に防衛に資するかは疑問で、かえって近隣国との緊張を招きかねない。対話を通じた信頼醸成や緊張緩和にこそ力を尽くすべきだ。
自民は防衛力強化へ、1%程度に抑えられていた防衛費の国内総生産(GDP)比を「2%以上も念頭に増額を目指す」と公約に掲げた。財政難の中、国民の不安に便乗し強引に進めることのないよう必要な装備など積算根拠を示さねばならない。
衆院選では、経済安全保障が論点に加わった。半導体やレアアースなど基幹産業に必要不可欠なサプライチェーン(供給網)の確保や生産の強化などで、繁栄や安定の維持を図る。ほぼ全ての党が公約に挙げており、選挙後も議論を重ね、より具体的な政策につなげてもらいたい。








