社説

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 学校法人明浄学院(大阪府熊取町)の資金21億円の横領を共謀したとして、業務上横領の罪に問われた不動産会社プレサンスコーポレーションの前社長に、大阪地裁が無罪判決(求刑懲役3年)を言い渡した。

 前社長は大阪地検特捜部が2019年に逮捕、起訴したが、判決は関係者の証言の信用性を否定し、取り調べで検事が圧力をかけたと批判した。検察は真摯(しんし)に受け止め、供述に依存した捜査を改めるべきだ。

 公判ではプレサンスの元幹部と、別の不動産会社ピアグレースの元社長による供述の信用性が争われた。2人は前社長が横領に関わったと捜査段階で認めていた。

 取り調べの録音・録画によると、元幹部は「会社で一番いけなかったのはあなたになる」「大罪人だ」などと検事に問いただされていた。証言の強要と言うしかない。

 判決は元幹部の供述について「核心部分に看過できない変遷がある」「虚偽の可能性が高い」とし、検事が過大な責任を感じさせたことが変遷の一因と判じた。

 またピアグレースの元社長は、証人として出廷した公判で「(プレサンス前社長の)関与を認めないと(あなたの)量刑は変わらないよ」と検事に言われた、と述べた。元社長は検察側の意向に合わせて供述し、その後に撤回を申し入れたが、検事は「法廷でひっくり返したらよい」と取り合わなかったという。

 検察側は公判でこの供述調書の証拠採用を認めたが、地裁は「信用性に疑問が残る」として退けた。供述の任意性が確保されていない以上、当然の判断であろう。

 何よりも深刻なのは、10年に発覚した証拠改ざん隠蔽(いんぺい)事件の教訓を検察が生かしていないことだ。文書偽造事件で逮捕された厚生労働省局長(当時)の村木厚子さんが無罪判決を受けた後、大阪地検特捜部の検事が証拠品のデータを書き換えていたことが発覚した問題である。

 この事件では当時の特捜部長らが有罪となり、強引な捜査手法が厳しく批判された。取り調べの可視化も進み、19年から検察の独自捜査でも録音・録画が義務付けられた。

 横領事件の公判では弁護側が記録を証拠請求し、元幹部への取り調べの映像が法廷で再生された。検事の態度をうかがう限り、改ざん事件への反省は感じられない。

 証拠改ざんに関して、村木さんは「怒りというより恐怖を感じた」と話している。近年、検察は容疑者を不起訴にする場合も処分理由を明らかにしない例が目立つ。公権力を使って捜査しながら、過程や結果を丁寧に説明しない。その閉鎖的な組織体質から変えていく必要がある。

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