社説

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 新型コロナウイルス下で女性の自殺が増えている。特に追い詰められているのが働く女性だ。非常事態と捉え、対策を急がねばならない。

 政府が先ごろ閣議決定した自殺対策白書によると、2020年に自ら命を絶った人は計2万1801人に上る。男性は前年よりわずかに減ったものの、女性が約千人増の7026人となったため、総数は09年以来の増加に転じた。

 過去5年(15~19年)の平均値と比べて、女性の「被雇用者・勤め人」の自殺が3割も増え、1500人を超えた。サービス業に就く人の増加率が高い。非正規雇用で働く女性は多く、コロナ禍による解雇やシフト減が相当大きく影響している状況がうかがえる。女性の雇用環境を早く安定させなくてはならない。

 長引く自粛などで家庭内のストレスが高まっている点も懸念される。

 兵庫県内の相談窓口に寄せられたドメスティックバイオレンス(DV)被害の相談は、20年度に過去最多の2万件超となった。DVが原因で世帯主と別居状態にあるといった相談が目立つという。

 国と自治体は危機意識を共有し、関係機関や自殺防止に取り組む民間団体との連携を深めてほしい。困窮世帯への効果的な支援はもちろん、社会的に孤立する人へのきめ細かなケアが欠かせない。

 生きづらさを感じても、自己責任論の強い風潮などから「自分の努力が足りない」と1人で抱え込む人は少なくない。SOSの声を上げやすい環境整備が必要だ。電話や対面の相談に加え、会員制交流サイト(SNS)の積極活用が有効だろう。

 相談件数が少ない自治体は、困っている人の声が十分に届いていない可能性がある。いま一度、相談体制を見直してもらいたい。

 「緊急事態宣言は解除されたが、時間が経過してから心の健康を害する人が出てくる可能性は高い」。伊丹市で自殺予防活動に取り組むNPO法人はこう指摘する。相談が来るのを待つだけでなく、困窮し、深刻な悩みを抱える人はいないか、周囲が異変に気づき、専門的な支援につなげる努力が一層重要になる。

 政府は、「ゲートキーパー」という身近な相談者の養成を目指している。「命の門番」とも呼ばれ、兵庫県でも一般市民向けに講座を開く自治体がある。育成にとどまらず、ゲートキーパーのネットワーク化や支援も望まれる。

 何より、つらい気持ちを抱える人は我慢せずに助けを求めてほしい。「どんな小さな悩みでもいい。弱音を吐くことは、決して恥ずかしいことじゃない」。相談窓口の支援者らの呼びかけを強調しておきたい。

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