社説

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 政府が巨費を投じた新型コロナウイルス対策事業のずさんな契約や管理の実態が浮き彫りになった。

 会計検査院が2020年度決算検査報告でコロナ関連の770事業を分析した結果、予算額65兆4165億円のうち、3割を超える約23兆円が使い残しとなっていた。

 緊急性を重視したとはいえ、規模ありきで中身の検討が不十分だった証拠だろう。苦しむ人に支援が届かず、不適切な執行がまかり通るのを見過ごすことはできない。岸田文雄首相は真摯(しんし)に受け止め、国民の命と暮らしを守るために本当に必要な対策に予算を振り向けるべきだ。

 無駄の典型は、安倍政権が主導した全世帯向けの「アベノマスク」を含む布製マスクの配布事業である。マスク不足が深刻化する中、厚生労働省が約2億8700万枚を調達したが、8千万枚以上が倉庫に眠ったままとなり、保管費は約6億円に上る。不良品の検品などにも約21億5千万円の追加費用がかかった。

 随意契約で、詳しい仕様書も不良品発生時の負担などの取り決めもなかった。布製の効果が疑問視されていたにもかかわらず、品質確認もしていなかったというからあきれる。実績づくりを急ぎ、国民の不安を軽視した失政と言わざるを得ない。

 接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の重大な不具合は、厚労省が開発・保守を委託したIT関連会社が動作確認テストを怠ったのが原因とされるが、資料が保存されておらず経緯を確認できなかった。

 観光支援事業「Go To トラベル」の停止に伴う旅行会社などへの補償は1157億円に上るが、関連業者にきちんと分配されたかを観光庁は把握していなかった。

 不透明な再委託が問題となった中小企業庁の持続化給付金事業は、大半が電通に再委託され、最大で9次請けまであり、不正受給も相次いだ。無駄遣いにとどまらず、政官業のなれ合いを疑われかねない。

 これらの事業は政権の肝いりで進められたが、妥当性の精査、事後の確認、検証に堪える記録保存と情報公開をおろそかにして国民の不信を高めた。その責任は重い。

 コロナ対策には、今後も膨大な税金が投じられようとしている。岸田政権は事業内容を厳しく見極め、病床と医療人材の確保、困窮者の支援などの課題解決に向けた予算執行を徹底するべきだ。

 一方、検査報告全体では、法令違反などの問題が指摘された件数は210件で過去最少だった。コロナ禍で十分な実地検査ができなかった影響が大きい。便乗した無駄や不正がないか、各省庁は足元を省みる意識を強く持たねばならない。

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