新型コロナウイルスワクチンの3回目接種が始まった。2回目接種から原則8カ月経過した人が対象で、医療従事者からスタートし、順次高齢者などに広げていく。
新たな変異株「オミクロン株」の感染者が国内でも確認され、流行の「第6波」が懸念される。政府は前倒しの接種を認める方針に転換したが、対象や時期について岸田文雄首相は明確にしていない。感染再拡大に備え、前倒しの基準づくりなど万全の対応をすべきだ。
追加の接種は、時間がたつにつれて低下する免疫力を高めるのが狙いだ。従来株より感染力が強い可能性があるオミクロン株の性質については、各国から研究成果が出始め、3回接種で予防効果が得られるとの報告もある。とはいえ結論付けるにはまだデータが不足している。
厚生労働省は、情報を収集して重症化リスクの程度やワクチンの効き具合を見極め、国民に分かりやすく説明してもらいたい。
接種の前倒しは、柔軟な対応を求める一部自治体の要望を受けた措置で、近く特例承認される見込みの米モデルナ製を活用するとしている。ワクチンを滞りなく供給できるかどうかは前倒しの対象をどこまで広げるかにもより、不透明な状況だ。
政府はワクチンの確保を計画的に進めると同時に、接種が遅れている途上国の現状も考慮し、国際社会と協調しながら各国への適切な供給にも目を配らねばならない。
1回目の接種では申し込みの電話が殺到したり、インターネットに不慣れな高齢者が予約できなかったりするなど、多くの自治体で混乱が生じた。今回の接種ではその教訓を生かせるかどうかが問われる。
神戸市は、市側が日時と会場を指定する「おまかせ予約」を新たに導入する。ネットか電話で自ら予約する従来の方式と併用する形だ。朝来市は、予約するタブレット端末を本庁舎や支所などに設置する準備を進めている。常駐する職員が高齢者の操作を手助けするという。
希望者が円滑に接種を受けられるよう、各自治体は知恵を絞り、医療従事者や会場の確保も含めた準備を着実に進めてほしい。2回目までと異なるワクチンを使う「交差接種」も課題となり、新たな混乱を回避できるような計画が求められる。
健康上の理由などでワクチンが打てない人のため、無料のPCR検査などの拡充も欠かせない。
国内の感染状況は現在落ち着いており、3回目接種を希望する人がどのくらいいるのかは見通せない。副反応などに不安を感じる人も少なくない。政府や自治体は丁寧な情報発信に努める必要がある。
