社説

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 兵庫県内の生活保護受給者24人が居住自治体に対し、減額支給の決定取り消しを求めた訴訟の判決で、神戸地裁が支給額引き下げを「適法」として原告の請求を棄却した。

 原告は、減額後の支給額では憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の維持に足りないと主張し、支給を担う伊丹、尼崎、神戸、明石市を相手に提訴していた。同種の訴訟は29都道府県で計約千人が起こしている。

 原告側の敗訴は、昨年6月の名古屋地裁、今年3月の札幌地裁などに続いて6件目となる。生活保護は社会の「最後の安全網」である。またしても司法が引き下げを追認したのは残念でならない。

 厚生労働省は2013~15年の安倍政権時に生活保護費の基準額を引き下げた。受給者は08年のリーマン・ショック後に急増し、民主党政権で増えたと批判する自民党が12年衆院選で減額を公約にした。「結論ありき」だったと言うしかない。

 減額は3年間で平均6・5%、最大で10%に及んだ。根拠になったのは08~11年の物価下落だった。厚労省は独自に算定した指数で支給額の基準を改定した。

 「引き下げ幅が大きくなりやすい算定だ」と主張する原告側に対し、判決は国側の裁量を認め、「判断の過程および手続きに過誤または欠陥があるとは解されない」とした。

 だが今年2月の大阪地裁判決は、正反対の判断を下した。厚労省独自の指数は、テレビやパソコンなど生活保護世帯の支出割合が低い品目を基にしており、下落率が大きい。そのため「統計の客観的な数値などとの整合性を欠く」と指摘した。

 さらに厚労省が、原油や穀物の価格が高騰し「特異な物価上昇」が起きた08年を減額算出の起点とした点にも疑問を呈し、国の生活保護引き下げを「違法」と結論付けた。神戸地裁判決と比べ、「最低限度の生活」を支えるという憲法と生活保護法の理念に沿い、明快である。厚労省は今回の勝訴に安堵(あんど)せず、受給者の生活実態に真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 一方、一連の訴訟で問題になっているのが、原告側が敗訴した福岡、京都、金沢地裁の判決文にあった同じ誤字である。「NHK受信料」がいずれも「NHK受診料」となっていた。原告側弁護団は、パソコンなどで文章を引き写す「コピペ」の疑いがあると批判している。

 執筆において「コピペ」があったとすれば由々しき問題だ。言うまでもなく、判決は各裁判官が独立した立場で書くべきものであり、安易な前例踏襲があってはならない。裁判所には、冷静な事実認定に基づく厳正な判断を求めたい。

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