社説

  • 印刷

 沖縄、広島、山口の3県の新型コロナウイルス感染拡大を受け、在日米軍関係者に関し、基地からの不要不急の外出を制限するとの共同声明を日米両政府が発表した。制限の期間は10日から14日間である。

 沖縄県では昨年12月以降、米海兵隊のキャンプ・ハンセン(金武(きん)町など)でクラスター(感染者集団)が起き、他の米軍施設でも感染者が急増した。山口県岩国市の米軍岩国基地でも感染者が増え続けた。同市に隣接する広島県を含めた3県では市中感染が広がり、まん延防止等重点措置を適用する事態となっている。

 市中感染拡大は米軍由来の新変異株「オミクロン株」に関係すると、関係自治体は訴えてきた。外出制限はその指摘を受けた対応だが、遅きに失したというしかない。

 沖縄県の玉城デニー知事は「米軍からの染み出しが大きな要因なのは間違いない」と憤り、広島県の湯崎英彦知事も「感染症は基地かどうかに関係なく影響する」と述べる。

 政府は外国人の新規入国を原則禁止するなどの厳しい水際対策を行ってきた。基地が新変異株の感染源とすれば「水際対策の穴」になったことになる。米軍に対する知事らの疑念と怒りは当然だろう。

 見過ごせないのは、米軍が出国時のPCR検査を免除したり、入国した米兵が行動制限期間中に基地内を自由に移動したりしていた問題だ。米軍は日本の感染対策に合わせるとしていたにもかかわらず、こうした事実が基地内のクラスター発生後に判明した。また米側は沖縄県による検査協力の申し出を、個人情報保護を理由に断るなどしてきた。

 基地内には日本人従業員も多く、外部と隔絶されているわけではない。マスクをしないまま基地外で飲食する米軍関係者もおり、飲酒運転容疑の摘発も相次ぐ。米軍の危機意識の低さにはあきれるしかない。

 共同声明にはマスク着用の義務付け、入国後14日間の行動制限の厳格化なども明記されたものの、実態は「米軍任せ」であり、実効性が保たれるかどうかは不透明だ。

 日本の検疫を受けないなどの対応を許しているのが、米軍の特権的地位を定めた日米地位協定である。これが基地周辺の自治体による感染対策の大きな障壁になっている。

 地位協定により米軍機の飛行には事実上制約がなく、米兵の犯罪への日本の捜査権は限られる。沖縄県などはこれまでも改定を強く求めてきたが、岸田文雄首相は「考えていない」と改めて否定している。

 「水際対策の穴」は図らずも、地位協定の不公平さや弊害を明らかにする結果となった。政府はこの機に協定の見直しに踏み出すべきだ。

社説の最新
もっと見る
 

天気(5月22日)

  • 26℃
  • ---℃
  • 20%

  • 28℃
  • ---℃
  • 20%

  • 26℃
  • ---℃
  • 10%

  • 29℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ