社説

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 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設が主要争点となった同市長選で、移設を推進する岸田政権が支援した現職渡具知(とぐち)武豊氏=自民、公明推薦=が再選された。移設反対の玉城(たまき)デニー知事が推す新人岸本洋平氏=立民、共産、れいわ、社民、地域政党・沖縄社大推薦=に約5千票の差をつけた。

 保革が結集した玉城氏の支持勢力「オール沖縄」には厳しい結果となった。夏の参院選や秋の知事選を控え、戦略の立て直しが迫られる。

 名護市長選は、辺野古が普天間の移設先に浮上して7度目で、政府が沿岸に土砂投入を始めた2018年末以降では初めてである。松野博一官房長官は選挙翌日の記者会見で、移設工事の推進が普天間の早期返還につながるとの考えを示した。

 だがこの選挙結果で、地元住民が基地移設を容認した-と単純に捉えることはできない。渡具知氏は初当選以来、移設への賛否を明らかにせず、選挙期間中も「国と県の推移を見守るという以外ない」と繰り返すだけだった。「争点隠し」との批判を受けたのも当然である。

 渡具知氏は、学校給食費や子ども医療費の無償化などの実績をアピールし、地域振興を訴えて支持を集めた。無償化の財源は、移設を前提として国から支給される米軍再編交付金だ。コロナ禍で地元経済が疲弊する中、有権者は暮らしを重視せざるを得なかったと言えよう。

 ただ、生活が厳しい中でも、移設反対を掲げて「交付金に頼らない」と訴えた岸本氏を、投票者の4割以上が支持した。政府はその民意を重く受け止めるべきだ。

 名護市への米軍再編交付金は、移設反対の稲嶺進市政時に凍結され、渡具知市政に変わると支給が再開された。17~21年度の交付額は計約74億5千万円に上る。国によるあからさまな「アメとムチ」である。

 「基地問題か、経済か」の選択を迫り、市民を分断する国の手法は強権的と言うしかない。

 市長選前に共同通信社が行った世論調査では、岸本氏支持層の9割、渡具知氏支持層の5割が、基地移設に反対する玉城県政を評価した。渡具知氏自身も「市民に反対が多いのは変わらない」と認めている。「移設中止も、地域振興も」と望むことは、沖縄では許されないのか。

 今年は沖縄の本土復帰50年を迎えるが、在日米軍専用施設面積の7割が集中する現実は変わらない。辺野古移設は難工事であり、普天間の危険が今後も続く問題を政府はどう考えるのか。岸田文雄首相は「辺野古が唯一の解決策」との態度を改め、工事をいったん中断し、県民の声に真摯(しんし)に耳を傾けてもらいたい。

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