社説

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 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大が続く中、政府はきのう、まん延防止等重点措置について、兵庫など17道府県の延長を決めた。沖縄など5県は解除する。期限は計31都道府県で3月6日までとなる。

 新規感染者数は全国的にピークを越えたとされるものの、高い水準で推移している。病床使用率も改善が進んでいない。自宅療養者数、1日当たりの死者数ともに過去最悪を更新中だ。重症者の増加も続く。

 兵庫県内でもきのう、5054人の新規感染者が確認され、依然高水準にある。病床使用率は76・4%、うち重症病床は33・0%に達している。死者も14人が報告された。

 岸田文雄首相は1カ月半ぶりの会見で「今が一番厳しい時。困難を乗り越えるため、もうしばらく協力をお願いしたい」と呼びかけた。「必要な医療は提供できている」とも述べたが、感染者の高止まりが続けば、医療への負荷が増す恐れがある。

 感染「第6波」は、家庭や学校、高齢者施設で広がっており、飲食店中心の対策の有効性を疑問視する声が出ている。重点措置を漫然と延長するのではなく、効果を見極めて、対策を見直す必要がある。

 最優先すべきは、重症化リスクが高い高齢者への対応である。深刻なのは死者の急増だ。今週に入り、連日200人を超える日が続き、70歳以上の高齢者が多くを占める。

 オミクロン株の特性を映し、コロナそのものでなく、感染で体力が弱り、持病を悪化させて亡くなる事例が目立つ。高齢者施設でのクラスター(感染者集団)も急増している。大阪市では保健所による疫学調査が追いつかず、クラスターの実態が把握できない事態に陥っている。このままでは多くの救える命をさらに失うことになりかねない。

 保健所は高齢者施設での濃厚接触者の特定作業に重点を置き、自治体が専門知識のある医療スタッフを派遣するなどして、抑え込むことが重要だ。自宅療養者の健康観察は地域の医療機関とも連携し、十分な体制を整えねばならない。

 鍵を握るのが、高齢者に対するワクチンの追加接種だ。首相は「1日100万回の接種を目指す」と表明した。遅きに失した感はあるが、高齢者施設の利用者や職員への接種は最優先に取り組む必要がある。

 一方で、首相は外国人の新規入国を原則停止する水際対策を3月から緩和する意向も示した。3回目接種の進捗(しんちょく)など、国内の現状と照らし合わせて慎重に進めるべきだ。

 感染の収束まで、いかに医療体制を維持するか。命を守るための手だてに全力を尽くしてもらいたい。

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