社説

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 ロシアのウクライナへの軍事侵略は、ウクライナ側の抵抗に遭い、首都キエフ周辺などで戦闘が激化しているもようだ。そんな中、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆する踏み込んだ発言をした。

 核抑止力部隊を高い警戒態勢に置くよう、軍に命じたのである。

 「核抑止力部隊」は、核兵器で敵を撃破する戦力を指すとみられる。「高い警戒態勢」とは「いつでも作戦を実行できる準備」だろう。

 ウクライナと、支援する欧米をけん制する狙いのようだが、ロシアは世界最大の核保有国である。一歩間違えば人類の破滅にもつながる危険な挑発は、断じて容認できない。

 プーチン氏が核使用に言及したのは、今回が初めてではない。侵攻前の2月7日にも「ロシアは核保有国だ」などと述べた。侵攻の際も同様の発言を繰り返し、「(ロシアに攻撃を加えれば)不幸な結果になる」などと威嚇した。

 ウクライナ南部のクリミア半島を武力編入した後も、「(核を使用する)準備はできていた」と語り、国際社会の批判を浴びた。

 核をちらつかせての揺さぶりは、もはや常とう手段と言っていい。

 一方でロシアなど核保有五大国の首脳は今年初め、核戦争の「回避」をうたう共同声明を発表した。核拡散防止条約(NPT)が保有国に課した核軍縮交渉義務を踏まえた決意だったが、プーチン氏が自らの責任を自覚しているとは思えない。

 ソ連崩壊後、ロシアはウクライナの非核化と安全保障を「ブダペスト覚書」として米英両国と共に約束した。武力侵攻は約束をほごにした背信行為と厳しく非難されている。

 ロシアが保有する核兵器は6千を超え、今も米国を上回る。身勝手な行為で「核なき世界」を目指す核軍縮の流れを逆行させるようでは、自らの安全保障も遠のく。そのことを冷静に認識する必要がある。

 耳を疑うのは、安倍晋三元首相が米国の核兵器を自国の領土内に配備する「核共有」政策を議論すべきだと言及したことだ。危機に便乗するかのような発言であり、国是である「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則と明確に矛盾する。

 安倍氏は「世界の安全がどのように守られているのか、現実の議論をタブー視してはならない」と述べたが、核廃絶を訴えてきた日本の姿勢にまで疑問を持たれかねない。岸田文雄首相や関係閣僚が「わが国の立場から考えて、認められない」と口をそろえて否定したのは当然だ。

 核による威嚇にも使用にも毅然(きぜん)と反対する。それが「唯一の被爆国」であり、「平和国家」としての立ち位置である。深く肝に銘じたい。

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