社説

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 東日本大震災と東京電力福島原発事故の発生から11年が過ぎても、全国で約3万8千人(復興庁調べ)が避難生活を余儀なくされている。いまだに放射線量が高く、一部で避難指示が継続する福島県には約2万7千人(同県調べ)が帰還できていない。第1原発が立地し、約7千人が暮らしていた双葉町は、今も一人も居住していない「全町避難」の状態にある。原発事故の深刻さと影響の大きさを改めて痛感する。

 福島県からの避難者は、兵庫県を含む全国に移り住む。帰りたくても帰れない人、郷里の仕事を失い生活基盤が整わない人、心身に不調がある人などそれぞれに苦境を抱える。手厚い支援が欠かせない。

 事故後、東電は国の指針に沿い、避難者などに賠償してきた。しかし金額などが被害実態に合わないとの批判が強く、各地で国と東電を相手に集団訴訟が約30件起こされた。原告総数は1万2千人を超える。

 今月、集団訴訟のうち福島、群馬、千葉の3件で、最高裁が東電の上告を退ける決定を出した。総額約14億円で、東電の賠償責任が同種訴訟で初めて確定した。続いて別の3件でも上告が退けられた。いずれも国の指針を上回る賠償を命じている。

 原告の主張を一定認めた点は評価できる。ただ、事故から確定までの歳月はあまりにも長い。避難指示区域外から移住する「自主避難者」の賠償額が低いとの問題も残る。東電は、避難者の声に真摯(しんし)に耳を傾ける必要がある。国は早急に指針の見直しを図るべきだ。

 一方、集団訴訟が問う国の責任に関しても最高裁が今夏にも統一判断を示すとみられる。一、二審では結論が分かれており、注目される。

 今も避難指示が続くのは、第1原発から西北の7市町にまたがる帰還困難区域(計約337平方キロ)だ。国は居住再開を目指す特定復興再生拠点区域を設け、除染などを優先的に進めてきた。双葉町でも今年6月ごろからようやく帰還が始まる。

 政府は昨年、2020年代に希望者全員が帰還できるように避難指示を解除する基本方針を決めた。だが復興庁の意向調査では、双葉町など4町で「戻りたい」と回答した住民は約1割にすぎない。帰還が順調に進むかどうかは見通せない。

 避難先で自宅を再建したり、就職したりした人も多いが、除染が希望者の住宅周辺にとどまることも帰還を妨げている一因だ。住民側が求める全域除染を検討してもらいたい。

 郷里での居住再開を望む住民の要望に応えつつ、帰還が困難な避難者の支援を拡充する。原発政策を推進してきた国と東電は長期間にわたる責任を覚悟せねばならない。

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