宮城、福島両県で16日夜、最大震度6強を観測する地震があった。強い揺れは東北地方を中心に広い範囲に及び、数人が死亡し、10県以上で多数の負傷者が出た。鉄道、道路などの交通網が寸断され、首都圏を含む最大約220万戸で停電が起きるなどライフラインにも影響した。
地震から一夜明けても死傷者や建物倒壊などの被災状況が十分につかめず、広域災害対応の難しさが改めて露呈した。政府は人的・物的被害の全容把握を急ぐとともに、自治体と連携し、迅速な復旧と被災者の支援に全力を尽くしてもらいたい。
東日本大震災の発生から丸11年となる11日、被災地の人たちは当時の記憶と向き合ったばかりだ。注意報が発令された津波は数十センチにとどまったが、激しい揺れと深夜に強いられた避難で、大惨事を強く思い起こした住民は少なくないだろう。
気象庁によると地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・4で、震源地は福島県沖の深さ57キロだった。同じクラスの地震は昨年2月にも同県沖で起きている。震源は太平洋プレート内部で、東日本大震災の余震域といい、1週間は同規模の地震に注意が要る。地盤の緩みによる土砂災害への警戒も怠らずにいたい。
被害は各地に広がった。宮城県白石市では、東京発仙台行きの東北新幹線やまびこ号が脱線した。乗客は「すごい揺れでバウンドした」と恐怖を語った。東北自動車道や常磐自動車道には亀裂や段差が生じ、多くの道路が通行止めになった。
東北新幹線では、レールや橋脚、架線を支える電柱の損傷も確認された。JR東日本は一部区間で運転を見合わせており、3月中の全線運行再開は厳しいとしている。脱線などの原因を綿密に検証し、今後の安全対策に生かす必要がある。
東京電力福島第1原発の2号機で使用済み核燃料プールの冷却が停止したことも住民に不安を与えた。再開まで約7時間半を要したが、東電は「冷却が止まっても安全性は保たれる」とした。プールにつながるタンクの水位低下なども認められており、東電による詳細な説明とさらなる地震対策が欠かせない。
放送・通信も課題を残した。音声通話やデータ通信ができない設備の故障が起きたほか、ラジオの放送が一部聴けない地域が生じた。停電があっても災害情報から途絶されない工夫を官民で重ねてほしい。
今後、南海トラフ巨大地震をはじめ、より大規模な広域災害に襲われる恐れがある。政府と自治体などは、災害に強いインフラ整備の現況と復旧対策などの備えを再点検しなければならない。私たちも避難経路や備蓄などを確認する機会にしたい。
