社説

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 宮城・福島両県で最大震度6強を観測した地震などの影響で、東京電力と東北電力管内で電力需給が極めて厳しい状況になり、経済産業省が「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を発令した。同省は200万~300万軒の大規模停電の恐れがあるとして、繰り返し節電を呼び掛けた。

 警報は順次解除されたものの、東日本大震災後に実施された計画停電を想起させる事態である。自然災害が電力供給体制の弱さを露呈させたと言える。電力会社や関係機関は、警報発令に至った経緯を深刻に受け止めなければならない。

 地震で福島県の火力発電所など6基が停止し、横浜市にある電源開発(Jパワー)の火力発電所2基も故障した。その上、気温の低下による暖房などの電力需要が拡大し、悪天候で太陽光発電の発電量低下が見込まれるなどの要因が重なった。

 電力需給逼迫警報は、供給にどの程度余力があるかを示す「供給予備率」が3%を下回る場合、政府が出す。2012年にできた制度で、発令は今回が初めてだ。節電要請に応じ、家庭や職場では照明を消したり暖房の温度を下げたりした。在宅用医療器具を使う患者らは、器具が止まってしまう不安を強いられた。

 供給管内全域が停電になる最悪の「ブラックアウト」は回避された。ただ、被災した一部発電所は復旧のめどが立たず、供給能力には余裕がない。電力需給危機の長期化も見越して対策を講じていく必要がある。

 東電は今回、他電力7社から最大200万キロワットを超える電力融通を受けた。現状ではこの能力が十分ではなく、拡充が不可欠だ。送電線の整備などは途上で、工事完了までに10~20年程度かかるとされる。周波数が東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツと異なる問題もある。政府は優先課題として取り組んでもらいたい。

 経産省の対応にも課題を残した。節電要請などが遅れたため、企業などは非常用発電設備を急きょ確認するなどの対応に追われた。今後に備えた検証が求められる。

 看過できないのは、産業界などから原発再稼働を求める声が上がった点だ。福島第1原発の事故後、原子力への国民の不信感は根強い。老朽原発の運転には専門家も懸念を示している。電力需給逼迫の検証を抜きにして、脱原発依存の流れを安易に後戻りさせてはならない。

 電力供給の脆弱(ぜいじゃく)さの背景には大規模発電所への依存がある。非常時の電力確保に向け、自立・分散型の発電システムが欠かせない。次世代蓄電池の開発など技術革新も重要になる。危機管理の上でも太陽光、風力発電など、地域ごとの再生可能エネルギーへの転換を急ぐべきだ。

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