社説

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 ロシアの軍事侵攻が続くウクライナから、避難民20人が政府専用機で到着した。自力で渡航できない人たちで、政府は自治体などと連携し滞在先確保などの支援策を講じる。

 これを受けて兵庫県は、県内に身を寄せる人に1年間で最大214万円の生活支援金を支給すると明らかにした。ふるさと納税制度を活用した寄付の受け付けも全国に先駆けてスタートし、就労や教育、医療などの財源に充当する方針だ。

 避難民には日本に親族や知人がいない人もいる。安心して暮らせるよう、きめ細かな支援に知恵を絞りたい。日本への避難をできる限り受け入れるため、態勢の拡充に官民挙げて取り組む必要がある。

 今回は、首相特使の林芳正外相が派遣先のポーランドから戻る際、政府専用機の予備機を使って迎え入れた。ウクライナでは総動員令で18~60歳の男性は原則出国できない。避難民の大半は女性と子どもや高齢者で、その傾向は続くだろう。

 一方、自力で日本に渡航した避難民もすでに400人を超えている。停戦実現が見通せない中、求められるのは、日本定住の選択も可能にする息の長い支援である。

 阪神・淡路大震災の被災地である兵庫、神戸は、「心のケア」や生活再建支援を通して傷ついた人々を救援した経験と実績、備えがある。多くの外国人が街に定住し、地域ぐるみで「共生の文化」も育んできた。

 ベトナム戦争後、定住を希望する約2600人のインドシナ難民を、姫路市に置いた「定住促進センター」で受け入れたこともある。改めて支える力を発揮するときだ。

 今回の避難民の受け入れに際し、政府は支援内容を公表した。生活費や医療費、通訳確保、日本語教育などの手厚いメニューが並ぶ。ただし、あくまでも人道的配慮に基づく「特例」との位置付けである。

 日本が加盟する「難民条約」には戦争避難の定義がない。そのため、より安定的な在留資格と公共サービスの受給が可能な「難民」には直ちに該当しないという理屈だ。

 しかし「人種」「宗教」「政治的意見」など、同条約が定める迫害の理由には、戦争が原因になっているケースも少なくない。個々の事情に即して柔軟に認定すべきだ。

 日本の難民認定数は年間50人以下で推移し、昨年の認定率は1・3%にとどまる。数十%の国もある中、「難民鎖国」と批判されてきた。

 今回の対応を、ウクライナ避難民受け入れに前向きな欧米向けのポーズに終わらせず、ミャンマーや中東からの避難民にも寛容な姿勢に転換し、人道支援の包括的な制度をつくる契機としなければならない。

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