社説

  • 印刷

 東芝の混迷がさらに深まった。経営再建の決め手としていた会社の2分割案を白紙に戻し、株式を特定のファンドに買い取ってもらい非上場化する検討に入った。

 2分割案は、半導体などを手がけるデバイス事業を切り離し、原発などのインフラ事業を本体に残す内容だ。経営の効率化が図れるとして、3月の臨時株主総会で会社側が提案したが、否決された。

 一方、株式の非公開化案は過去にも浮上した。市場価格よりも株式を高値で買い取るのが一般的で、株主にメリットがある。

 昨年4月、英投資ファンドによる買収提案が判明すると、当時の東芝社長がかつてこのファンドの幹部だったことなどから社内の反発を招き、実現しなかった。社長の辞任にも発展した。

 東芝は上場維持に根強いこだわりを持つとされる。しかし、ここへきて方針転換したのは、「物言う株主」に押されたためである。今年6月の定時株主総会で、買い取り先との交渉状況を報告するとしている。

 果たして、非上場化が東芝の価値向上に最良の手法なのか。経営陣は議論を尽くすべきだ。まずは会社をどう成長させるか、将来展望を明確に示す必要がある。ビジョンを欠いたまま、目先の株主対策に終始するようであれば、企業統治の正常化はさらに遠のきかねない。

 非上場化には、ほかにも課題がある。半導体や原発、軍事品を手がける東芝は、安全保障に関わる企業への外資の出資を制限する外為法の適用対象となっている。

 3月の臨時株主総会後、米投資ファンドが東芝の買収を検討していることが明らかになった。筆頭株主であるシンガポールのファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」は賛同している。経済安全保障の観点から、東芝には慎重な判断が求められる。

 東芝の迷走は、2015年の不正会計発覚から始まった。米原発事業の失敗で経営危機に陥り、半導体メモリ事業などを次々と売却した。債務超過による上場廃止を回避するために頼ったのが、エフィッシモなどの海外の投資ファンドだった。

 ところが、経営陣は物言う株主と正面から向き合わず、関係を悪化させた。肝心の経営再建策は実効性に乏しく、長期的な成長を望む株主の期待にも応えられていない。

 東芝社長に今年3月就任した島田太郎氏はデジタル分野に詳しいとされ、「今までにないサービスを提供できる会社に変貌させたい」と述べた。株主との対話の在り方を根本的に見直し、技術力を磨くことで再生への道筋をつけてもらいたい。

社説の最新
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ