国会議員に歳費(給与)とは別に支給される月額100万円の「文書通信交通滞在費(文通費)」について、日割り支給に見直し、名称も「調査研究広報滞在費」に変更する改正法が成立した。
焦点だった使途公開や未使用分の国庫返納などは結論を出せず、先送りされた。昨年秋に文通費が政治課題になってから5カ月も費やしながら、国会の不作為との批判は免れない。
このタイミングで与野党が日割り支給に合意したのは、24日投開票の参院石川選挙区補欠選挙での当選者が満額を支給されるのを避けたかったからだ。
そもそも文通費の見直しは、昨年10月31日の衆院選で当選した日本維新の会の新人議員が「在職1日で1カ月分を満額支給されるのはおかしい」と問題提起したのが発端である。
昨年の臨時国会で、日割り支給について与野党は合意していた。しかし野党が求めた使途公開や、現在は公職選挙法で禁じられている国庫返納などに与党が慎重姿勢を崩さず、法改正に至らなかった。国民が求めているのは制度の抜本的な見直しであり、日割り支給の先行決着だけでは到底納得できない。
見過ごせないのは、法改正に伴う使途の拡大だ。名称変更と併せて、「公の書類発送、通信のため」としていた支給目的を「調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動」に改める。透明性を高めるどころか、事実上、何に使っても構わないという露骨な「お手盛り」ではないか。
文通費は、これまでも人件費や事務所費などに充てられているとされ、「第二の給与」と言われてきた。領収書の添付や使途の報告を求められず、残金の返還義務もない。税金で賄われているのに、何にどれだけ使われたのか、国民はチェックのしようがない。
地方議会では政務活動費に関しては使途や領収書の公開が進んでいる。目的を変え、使途を広げるのなら、具体的な基準を定め、透明性を確保するのは当然のことだ。
「政治とカネ」に対する国民の視線は厳しい。与野党は今国会中に、文通費の透明化を必ず実現しなければならない。
