社説

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 大企業にパワーハラスメントの防止対策を求めた女性活躍・ハラスメント規制法は、今月から中小企業にも対策を義務付けた。これまで中小企業については、努力義務にとどまっていた。

 パワハラ防止は企業の責務である。根絶へ向け、相談体制や再発防止の実効性を高めることが不可欠だ。社内の取り組みをいま一度点検し、加害者への対処方針などを含め、従業員に周知徹底してほしい。

 「上司から毎日『生きてて恥ずかしくないのか』などと暴言を吐かれる」。兵庫労働局に寄せられた声である。2020年度に同労働局が受けたパワハラ関連の相談は約3500件に上る。解雇や労働条件引き下げなどの相談件数を大きく上回り、9年連続で最多となった。

 自殺やうつ病に追い込まれる労働者も後を絶たない。精神疾患を発症し、20年度に労災認定された全国608件のうち、パワハラが原因の事例は99件と最も多かった。パワハラ自殺を巡っては、トヨタ自動車の男性社員について同社が因果関係を認め、今年1月に遺族と和解した。

 残念ながら、これらの被害は氷山の一角とみるべきだろう。

 何がパワハラに当たるかは社会で十分に共有されておらず、被害を訴えることをためらう人は多い。相談がないからといって、パワハラ被害がゼロとは限らない。事業主は肝に銘じてもらいたい。

 厚生労働省はパワハラを6類型に分け、指針で示す。「身体的攻撃」「精神的攻撃」、別室に隔離するなどの「人間関係からの切り離し」、遂行不可能な仕事を強いる「過大な要求」、仕事を与えない「過小な要求」、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」である。

 企業からは「個の侵害」への対応が難しいとの声が上がっている。例えば指針は、仕事上の配慮をするのに家族の状況を尋ねるのはパワハラには当たらないとしている。だが、その際にプライバシーなどへの配慮を欠いた言動があれば、パワハラになり得るだろう。

 何がパワハラになるかの線引きばかりに気を取られるのではなく、誰もが働きやすい職場にするために何が必要かを考える契機としたい。「価値観を押しつけていないか自問してほしい」と専門家は助言する。

 指針が対象とするのは従業員に限られる。フリーランスや就職活動中の学生へのハラスメントや、顧客からの悪質なクレームも社会問題となっており、対象拡大が求められる。

 世界の潮流はハラスメントの禁止である。企業への防止対策義務化だけでは不十分だ。日本も禁止に向けた法整備を急がねばならない。

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