社説

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 北海道・知床半島沖のオホーツク海で23日、乗客乗員26人を乗せた観光船「KAZU 1(カズワン)」が遭難した。子どもを含む乗客らの死亡が相次いで確認され、依然多くが行方不明となっている。現場の海域は水温2~4度程度という厳しい状況である。関係機関は安否不明者の一刻も早い救助に全力を尽くしてほしい。なぜこれほどの惨事が起きたのか、原因の究明が急がれる。

 乗客は10歳未満から70代までの24人で、兵庫を含む9都道府県の13グループが名簿に記載されている。

 第1管区海上保安本部などによると、カズワンは「30度ほど傾いている」と運航会社「知床遊覧船」に連絡した後、音信を絶った。1管は、カズワンが沈没した可能性が高いとみて船体の発見を急ぐとともに、業務上過失致死などの疑いがあるとみて捜査する。国土交通省も同社への特別監査を始め、安全管理規程や運行基準の確認を進めている。

 運航会社の出航判断の調査も重要だ。事故当時、現場周辺には強風・波浪注意報が出ていたにもかかわらずカズワンは出航した。船長は複数の関係者からやめるよう助言を受けていたという。地元漁船は危険と判断して午前中には引き返しており、「人災」と指摘する専門家もいる。なぜ運航を中止しなかったのか。同社は真摯(しんし)に説明するべきだ。

 関係者によると、現地では観光船の運航会社4社が「知床小型観光船協議会」を組織し、気象や海の情報を共有している。通常は大型連休から操業するが、知床遊覧船だけが時期を早め、23日が運航初日だったという。営利優先の企業姿勢が事故につながった可能性もある。運輸安全委員会は1管とも連携し、事故の背景にも踏み込まなければならない。

 カズワンは昨年5月、海上の浮遊物と衝突して乗客3人に軽傷を負わせる事故を起こした。翌月には浅瀬で座礁し、国交省が監査、指導したという。船長は今年1月、業務上過失往来危険容疑で書類送検されたが、刑事処分は出ていなかった。

 2年前に赴任したが、船長の経験はわずか1年といい、技量不足との指摘もある。事故を機に、同社はどのような再発防止策を講じていたのか。社員教育の在り方も問われる。

 事故を受け、知床小型観光船協議会の4社は5月8日までの運航自粛を決めた。知床は世界自然遺産に登録され、毎年多くの観光客が訪れている。一方で海域はしけやすく、岩礁も多いという。観光客が望んでも、事故の恐れがある場合は欠航をためらうべきではない。

 大型連休が近づく中、観光船の事故は人ごとではない。各事業者は安全対策を改めて徹底してほしい。

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